積読ダイエットチャレンジ(残1519冊)

日々積み上がる積読メタボを2030年までに解消するレコーディング読書ログ

2022年10月に買った本(15)・読んだ本(1)↑14冊増量

2022年10月に買った本(15)

 

【単行本】『マルペルチュイ』ジャン・レー, 篠田知和基

Kindle】『The Illustrated Gormenghast Trilogy』Mervyn Peake

田中芳樹で検索していたらForbesのインタビューを見つけた。田中芳樹もついにグローバル!と興奮。

www.forbes.com

タイミング的には銀河英雄伝説の一巻が英訳された時のもの。2016年の4月頃。銀河英雄伝説の英訳と言えば2000年代初頭くらいに中国語版からの重訳版(たぶん中国系米国人による無許可翻訳)が出回ってたと思うんだけど、ちらっと一巻を読んだ感じだとかなり違和感なく訳されていてなかなか良かった印象があった。それまでも英訳の試みはあったらしいんだけど日の目を見なかったのは帝国サイドが○○○だからという噂があった。あれはどうなったんだろう?公式の翻訳が出たということはデタラメだったんだろうか?それとも時代の変化でアメリカも柔らかくなったのか?

インタビューの内容としてはごく普通だけど、影響を受けた作品ということでマルペルチュイとゴーメンガーストが挙げられていたのが目を引く。どちらもゴシックホラー小説らしいのだけど、これらの作品は他のインタビューで名前を挙げられてたところを見たことが無い気がする。外国メディアに対するリップサービス的な返答だったのか、普段押し隠していた本音がポロリしたのかもしれない。どちらにしても珍しいので購入した。マルペルチュイは国書刊行会から新訳が出ているけど高いので見送り。ゴーメンガーストは翻訳も出ているけど原書が読みたかったので英語版にした。

 

【BookWalker】『平清盛の闘い 幻の中世国家』元木秦雄

https://bookwalker.jp/de9772ed2d-748b-4fb2-a2e2-708c799b98b3/?acode=akNehwjg

bookwalker.jp

Kadokawa株主優待でBookWalkerのコイン4500円分をゲットし、丁度Bookwalkerでセールもやっていたので早速色々購入してみた。平清盛にクローズアップした本ってあまりなさそう。

 

【BookWalker】『自民党統一教会汚染 追跡3000日』鈴木エイト

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統一教会と言えば90年代の合同結婚式がテレビ等でセンセーショナルにとり扱われてた記憶があるのだが、最近はすっかり名前を聞かなくなっていた、安倍晋三元首相の暗殺事件で再び脚光を浴びるまでは。そんな忘れ去られていた統一教会をずっと追い続けていたジャーナリストが書いた本ということで購入。これはセールでは無かったけど購入した。こういう気概のあるジャーナリストは潤うべき。

 

【BookWalker】『百万都市 江戸の生活』北原進

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【BookWalker】『百万都市 江戸の経済』北原進

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【BookWalker】『代官の日常生活 江戸の中間管理職』西沢淳男

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15年くらい前に田中優子の江戸本を何冊か読んで、時代小説や時代劇とは一味違う江戸時代の暮らしに惹かれたのを覚えている。もしこの時代に王侯貴族でなく庶民に生まれていたなら江戸に住みたいと、海外の研究者に言わしめるほど清潔で魅力的だった庶民の生活が江戸にはあったらしい。以来、江戸の実像や風俗を研究した書籍を見ると無性に買いたくなる癖がついた。特にこういうセールがあると片っ端からポチりたくなる。江戸本は読まないんだけど買ってしまうジャンルの一つ。いやいつか読むんだけど。

 

【BookWalker】『人類を変えた 科学の大発見』小谷太郎

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科学の新発見の瞬間ってどんな感じなのかねーという興味。これはセール。

 

【BookWalker】『謎と起源の秘密 最新・彗星学』渡部潤一, 阿部新助

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宇宙本も江戸本と似たような感じで、いつかまとめて読むためにセールで見かける度にポチる癖がついている。宇宙は最後のフロンティア。

 

【BookWalker】『新耳袋』第一夜 現代百物語』木原浩勝, 中山市朗

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「もう一つの「バルス」」と「ふたりのトトロ」が面白かったので買ってみた。ちなみにこれはセールではない。スタジオジブリについて貴重な証言を残した木原浩勝への純粋な興味による。しかしスタジオジブリから実話怪談って振れ幅すごすぎるな。

 

【BookWalker】『地面師 他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団』森功

bookwalker.jp

アパホテルが詐欺られた時のニュースで「地面師」という名称を初めて聞いた気がする。ふとしたことでまた地面師という言葉を見かけた(何かのネット記事)ので、本が出てないか調べてウィッシュリストに入れていたのを思い出した。セールでは無かったけどタイミング良かったので他の本と一緒に購入。

 

【文庫】『秘録 東京裁判清瀬一郎

www.tokyo-np.co.jp

これは本当にひどい話で、直接命令を下した少佐はBC級戦犯裁判で絞首刑に処されているのだけど、帝国海軍の指揮系統がどうなっていたのかを辿ると、当時軍令部総長豊田副武に行き着く。彼はA級戦犯として拘留されたものの不起訴となり、結局公職追放だけで72歳まで何事もなく生き長らえたようだ。

ja.wikipedia.org

で、東京裁判。昔、小林正樹のクソ長いドキュメンタリー映画ヒストリーチャンネルで見たんだけど、もはや東条英機大川周明に頭をポカリと叩かれている場面しか記憶になく、記憶をアップデートしたくなったので検索。本書がどうやら名著らしいので購入した。

 

【新書】『BC級戦犯裁判』林博史

BC級戦犯の裁判資料はほんの20年くらい前までロクに公開されていなかったらしい。巣鴨プリズン東京裁判で全部終わったくらいの雑な認識しかなかったけどBC級戦犯裁判は別個にやっていたらしい。こちらもAmazonのレビューが良かったので購入してみた。

 

【単行本】『銀河英雄伝説読本』らいとすたっふ

【単行本】『田中芳樹読本』早川書房編集部

自分の中で田中芳樹研究がスタートしたので購入した。田中芳樹には中高生の時にドハマリして、数少ない完結作品のマヴァール年代記から途中で放棄された灼熱の竜騎兵シリーズまで当時出版されていた作品はほぼ全て読み、当時続巻が出ていた創竜伝夏の魔術シリーズを楽しみに読んでいたのだけど、どちらもシリーズが進むにつれて違和感が大きくなりすぎて、大学の頃にはすっかり冷めていた。これは思春期に田中芳樹ファンになった誰もがたどる幻滅曲線なのだけど、やはりおじさんになって色々と昔を思い出すと、銀河英雄伝説とかアルスラーン戦記の初期とかはまぎれもなく名作だったよなぁとぼちぼち再評価している。これも田中芳樹ファンの誰もがたどる再評価曲線なのだろうか。

田中芳樹と言えば突如シリーズを再開(という印象)して完結したアルスラーン戦記タイタニアは、悪い評価しか聞かないのはどうしたことだろうか?

いったいどういう事情で長い中断期間があり、また筆をとる気になったのか?誰の仕掛けだったのか?らいとすたっふって何?出版社流転の真相などオールドファンとしての興味はつきない。Youtubeチャンネルに出演する田中芳樹は思っていたより好々爺としたおじいさんで、編集者に恵まれなくて性格がねじくれて晩節を汚しているとばかり思っていた自分の認識を改めた。完結したアルスラーン戦記タイタニアも読んでみるべきなのかも。

 

 

Kobo】『天の釘』鈴木笑子

偶然パチンコの歴史をまとめた動画をYoutubeで見た。無秩序だった釘の並びを調整し、パチンコのゲーム性を飛躍的に上げた天才がパチンコ産業黎明期に居たらしい。その配列は正村ゲージと呼ばれ、その後のパチンコ産業の隆盛のきっかけになったとか。本書はその人の評伝。どんな産業であれ、こういうエポックメイキングな事象を成し遂げた人物の評伝は読みたくなる。

 

読んだ本(1)

【DMM Books】皇帝フリードリッヒ二世の生涯(上下)合本版

★★★☆

これはDMM Booksの70%オフセールで購入。皇帝フリードリッヒ二世についての前提知識も興味も全くなく、塩野七生の著作というただ一点だけで購入した。塩野七生は昔「ローマ人の物語」が一世を風靡した頃に何冊か読んで非常に面白かった記憶があるのでその印象だけで買いまくった。70%オフセールの上限100冊の内、塩野七生の本だけで20冊買っていた。その判断は吉だったのか?ということなのだけど、この本に関しては、微妙だったかもしれない。

フリードリッヒ二世という類稀で魅力的な人物に焦点をあてたのはとてもよくて、皇帝としての側面、社会起業家的な側面、家庭人としての側面、趣味人としての側面など色々な視点からフリードリッヒ二世の生涯を何度も反復しながら描く試みも新鮮と言えば新鮮だった。前書きに書かれていた、フリードリッヒ二世という最も中世的でない人物とまごうことなき暗黒時代なド中世世界(主に教皇)の対立・軋轢を描くことで、中世世界を浮き彫りにする(パラフレーズ)という試みは成功しているとも思う。

なんだけど、歴史小説というより「皇帝フリードリッヒ二世の生涯とその時代」をテーマにした連作エッセイ集みたいな感じで、ぶ厚い歴史小説を読んだという満足感が薄かった。

塩野七生司馬遼太郎と同じく神の視点タイプの歴史小説家なんだけど、司馬遼太郎にあるような若干のキャラクター主観視点が頑なに排除されていて、どこまで行っても塩野七生の主観でしかないのも段々しんどく感じる。

それに加えて客観性を担保しようというお気持ちが文章から少しも感じられないというか、読者は私の言うことだけを信じれば良いのだ、的な姿勢が行間から漂っており、それが次第に鼻に付いてくる。

その姿勢は引用文献・先行研究の紹介からも見て取れる。

「『ローマ亡き後の地中海世界』を書いていた当時に集めた史料の中に、現代ではモロッコアルジェリアチュニジアリビアと分れている北アフリカイスラム世界と、当時では地中海をはさんでこの北アフリカと対していたキリスト教世界の国々、それもとくにイタリアの海洋都市国家ジェノヴァ、ピサ、ヴェネツィアが、何を輸入し何を輸出していたかについての研究書があった。」

いや、その研究書の名前書こうよ。

「この時期のフリードリヒの行動を逐一追った研究者によれば」

いや、その研究者の名前挙げようよ。

他者の情報を引用する際にこういう風に情報をぼかす正当な理由って何かある?

その癖自著で既に書いた内容があればいちいちそちらを参照するように、事あるごとに言及する姿勢は対照的である。

「宗教関係者の軍事行動がうまくいかない理由は『十字軍物語』の…に詳述」

「このヴェネツィアがいかに細心の注意を払って内部抗争が起きない社会づくりに努めたかは『海の都の物語』を読んでもらうしかないが、」

などなど。

他人の情報を引用する時には出典をぼかし、自著はあらゆるチャンスで宣伝する姿勢はよろしくない。

三者的な情報を極力制限しつつ自分の考えのみを伝える姿勢はカルト臭すら感じる。

神の視点タイプの歴史小説とキャラクター視点タイプの歴史小説では、個人的には神の視点タイプの歴史小説が断然好きなんだけど、この本では神の視点というより塩野七生の我が強く出ている印象があり、それがむしろ邪魔に感じた。例えて言うと、もっとよくフリードリッヒ二世を見たいのに塩野七生がかぶりつきの特等席に座っていてよく見えない感じ。やはり神の視点タイプの小説の語り手は極力自我を消し去る方が良い気がする。

当時の教会と皇帝の権力の緊張関係など、歴史的経緯から地政学的理由まで多面的に説明してくれるので当時の状況が非常によくわかるし、皇帝の任命権の根拠とされ、教皇権の優越に絶大な力を与えた「コンスタンティヌス大帝の寄進状」が後世に偽書と判明する話などスリリングで面白かった。この話だけで一本書いて欲しいくらいだ。

ja.wikipedia.org

神の視点で歴史を物語るときに公平性・客観性をどう担保するのかっていうのも重要なポイントなんだなぁ。

 

10月振り返りコメント

10月はカドカワ株主優待で本を買いまくった月だった。一冊しか読めてないのは11月に英語のコンテストがあり、その対策のためにほぼ英語の本しか読んでなかったせいかな。