積読ダイエットチャレンジ(残1519冊)

日々積み上がる積読メタボを2030年までに解消するレコーディング読書ログ

2022年8月に買った本(6)・読んだ本(7)↓1冊減量

2022年8月に買った本(6)

Kindle】『The Campaigns of Napoleon』David G. Chandler

Kindle】『Tactics and the Experience of Battle in the Age of Napoleon』Rory Muir

北方水滸伝を読んでて、やっぱり戦術レベルの戦闘描写ってバチクソ面白いんだよなぁという思いを新たにした。司馬遼太郎も従軍経験があるだけに坂の上の雲の戦闘描写は一級品だったし、宮崎駿の漫画版「風の谷のナウシカ」のトルメキア戦役の描写とか、田中芳樹の「銀河英雄伝説」とか、過去の戦闘描写が巧みだった名作が思い出されて、やっぱり戦いの描写がよく出来ているストーリー最高!という思いが高まる。

もちろん戦争はどこから見ても悲劇なんだけど、個々の戦闘を勝者側から見るとロマンチックな冒険活劇に映ることもあるわけで、この錯覚がバレにくそうな牧歌的時代の戦記とか架空世界の戦記はギリギリのバランスでエンターテイメントとして成立しやすいのではないだろうか?

つまり、わたしはこういうのもっと読みたいし、こういうの書けたらきっと楽しいと思った。

というわけで人類史上屈指の軍事的天才と名高いナポレオンについて検索してみた。なぜナポレオンか?というと時代的に資料が沢山残っていそうなので、事実に基づいた名著が多そうだから。あとは時代的にまだ戦争にロマンの香りが残っていそうというのもある。

そんな思惑の中検索したところ、正にうってつけの記事を見つけてしまった。

note.com

ありがたい。で、早速紹介されていたものの中で良さそうなのを買ってみた。

因みにデービッド・チャンドラーの「The Campaigns of Napoleon」は「ナポレオン戦争」というタイトルで全5巻の翻訳があるのだけど既に絶版のようでAmazonではどの巻にもプレミア価格がついていた。中には30万円くらいの値が付いているものもあり、全巻買ったら軽く100万越える。こういうものこそさっさと電子書籍版を出して欲しいのだが。選択の余地が無いので原書を購入した。

Tactics and the Experience of Battle in the Age of Napoleon』は翻訳が無かった。内容的には当時の戦中日誌や回顧録から兵士の戦場での行動や戦場心理を読み解いたもののようだ。

同時に紹介されていた『Imperial Bayonets: Tactics of the Napoleonic Battery, Battalion and Brigade as Found in Contemporary Regulations. Helion and Company.』

も買おうか迷ったのだけど、Kindle版が取り下げられたのか無くなっており、しかもAmazon.comの一部のレビューでは、本書は机上のデータしかなく、しかもそのデータの適用もかなりいい加減、みたいな叩かれ方をしていたので購入するのは止めた。

そのレビューでは別のおすすめとして、

Kindle】『Military Experience in the Age of Reason』Christopher Duffy

を挙げており、調べると評価も良くKindleもあり少し安いのでこちらを購入した。これも当時の軍隊生活の実態がよくわかりそう。

 

【文庫】『ラサリーリョ・デ・トルメスの生涯』作者不詳 会田由

北方水滸伝で胸焼けがするほど好漢成分を摂取したので、解毒ではないけど悪漢小説(ピカレスク・ロマン)が読みたくなった。とは言えこれと言ってタイトルも思い浮かばず、検索すると本書が元祖ピカレスク・ロマンらしいということで購入。原点に戻るの大事。ドラマなら最高のピカレスク・ロマンは「ブレイキングバッド」とか思い浮かぶけど小説というと全く思い浮かばないのはなぜだろう。漫画の方がまだありそうだ。北方謙三のマイ水滸伝を読んでいると色んなオルタナティブ水滸伝が思い浮かぶ。悪漢小説のアングルもアリと思う。

 

【文庫】『新編 思い出す人々』内田魯庵

『ラサリーリョ・デ・トルメスの生涯』を購入したところおすすめに出てきた。二葉亭四迷とか、その当時の文人についての内情について書かれているらしい。二葉亭四迷は読んだことないけど時代に興味があるので購入。

 

Kobo】『もう一つの「バルス宮崎駿と『天空の城ラピュタ』の時代』木原浩勝

岡田斗司夫天空の城ラピュタに関する動画のどれかでソースの一つに上げられており、面白そうだったので購入。

 

2022年8月に読んだ本(7)

【DMM books】『水滸伝 十六 馳驟の章』北方謙三

【DMM books】『水滸伝 十七 朱雀の章』北方謙三

【DMM books】『水滸伝 十八 乾坤の章』北方謙三

【DMM books】『水滸伝 十九 旌旗の章』北方謙三

★★★★

北方謙三の長い長い北方水滸伝もついに終幕。正直、後半、特にオリキャラの楊令が活躍しだすあたりから物語としてはかなりダレて来ていた感は否めない。ただ、全編を通してキャラクターも物語も活劇的魅力に溢れており、戦闘描写が濃厚な時代アクション好きの自分には充分楽しめる作品だった。

「北方水滸伝」は北方謙三が革命をテーマに水滸伝をリ・イマジネーションした物語である。原典からの逸脱は相当好き勝手にしている。とは言え最終的に梁山泊は官軍に恭順するという原典のプロットがプロットなので、そこにどう折り合いを付けるとしても、歴史を書き換えて梁山泊の革命を成就させる以外、どうやっても後半のダレは不可避だったのかもしれない。革命というテーマは冒険小説としてはうってつけなんだけど、その挫折、ていうところまでが物語の射程に入ってしまうと、お話が文学寄りになってしまいそうなので冒険活劇としては座りが悪いのかもしれない。オリキャラの投入もそのテコ入れ策と考えれば納得する部分はある。

何より108人以上も居るネームドキャラクター(敵方を含めると更に膨れ上がる)もそれぞれ可能な限り個性的に描き分けられていて、魯智深(魯達)、林冲、武松、李逵、など原典の水滸伝でも有名キャラだけでなく、解珍、候健など、マイナーなキャラクターでも印象に残っている登場人物は多いのは北方水滸伝ならではと思う。特に解珍、宣賛、候健あたりは水滸伝にあまり親しみの無かった自分が全く知らなかった存在だったのだけど、北方謙三が相当にアレンジを加えたらしく、原典とは全く違った魅力を放っているようだ。個人的に印象に深いのは、梁山泊と縁を結ぶまでは没落して猟師として糊口を凌いでいたが実は超有能という解珍。彼はおっさんの星すぎる。また、あまり活躍するキャラではないけど仕立て屋でスパイという、どこかで聞いたような設定の候健もおっさんの悲哀があって良い。原典を調べると候健は仕立て屋だがスパイという設定は無かったようなので、これはテイラー・オブ・パナマの引用だろうか?そういった遊び心も感じられるアレンジを見つける楽しさもあるかもしれない。ただ扈三娘と聞煥章の因縁のように散々匂わせておいて何の回収も無い伏線があったり、その後どうなったのか何の消息も無いキャラクターが何人も居るのは単体の作品として完結している感を削いでいると思った。このあたりは続編の「楊令伝」を読んでくれということなのだろう。

問題は「楊令伝」全15巻、続々編の「岳飛伝」が全17巻、合わせて残り32巻まで付き合えるか否かですなぁ。

 

【DMM books】『替天行道/北方水滸伝読本』北方謙三

★★★★☆

北方水滸伝執筆の舞台裏を赤裸々に公開したファンブック。DMM booksで全巻セットを購入した時にオマケで付いて来たので惰性で読んだんだけど、これが予想外に面白かった。

前半はシリーズ完結前の対談記事や書評の収録、雑誌掲載時のキャッチの再録、表紙絵作成時の舞台裏、著者による登場人物メモなどで正にファン向けの内容なんだけど、後半の「編集者からの手紙」の章から、より本作の創作過程に迫る内容、つまり北方水滸伝が生まれる過程が赤裸々にわかるようになっている。と言うのも「編集者からの手紙」は文字通り編集者の山田裕樹が、雑誌掲載分を受け取るたびに北方謙三へ送っていたフィードバックのFAXの束をまるっと公開したものだからである。

後段の対談によると実際には一部内容が検閲・削除されているようだけど、この「編集者からの手紙」を読むと、山田裕樹氏は原典の水滸伝を知悉しており、北方水滸伝がそこからどれだけ逸脱しているか正確に把握しているのがわかる。また、作家のガイドランナーとしての役割を非常に献身的に果たしていることもわかる。この「編集者からの手紙」の章は北方謙三たっての希望で収録したとのことなので、書き手である北方謙三も北方水滸伝の創作の過程で編集者山田裕樹が果たした役割の大きさを明確に認識していることも伺えて素晴らしい。

しかしこの本の白眉は最終章の「[対談7]北方謙三の起・承・転」なのである。この章は大沢在昌司会による作家北方謙三と編集者山田裕樹の対談なのだけど、これがまた素晴らしい。タイトルに「北方謙三の起・承・転」とあるように、大沢在昌が「最強タッグ」と認める編集者山田裕樹と作家北方謙三の出会いから歴史小説作家としてのデビュー、北方水滸伝の執筆にいたるまでの経緯を深堀りしていく内容となっている。

純文学作家として芽が出ず「エンタテ作家」への転身を図ろうとする30才の北方謙三と、それを編集者として売り出そうとする24才の山田裕樹の奮闘が非常にくだけた感じで語られており、それがまるで戦友同士が軽口を叩きながら、あの時は実はこうでこうで、と過去の戦いの思い出話に興じるような暖かさとユーモアにあふれている。いい歳をしたわたしのようなおっさんに憧れさえ抱かせる関係なのだ。対談でこのような関係性を浮き出させた大沢在昌の手腕もすごい。

本書に収録されている山田裕樹の文章は分量的にもかなり多く、そのざっくばらんで下世話なお人柄はそれまでにも存分に伝わってくるのだが、その文章はどれも担当作家の北方謙三に向けたものか、北方水滸伝の読者に向けたいわばお仕事の文章であり、編集者として何を考えていたのかということが露わになるのは実にこの対談だけなのである。山田裕樹の編集者としてのクレバーさを引き出した大沢在昌の司会力に感謝。この章だけでも何度でも読める良書だった。編集者と作家の関係性、編集者の果たすべき役割について知りたい人にもおすすめできる内容と思う。

 

Kobo】『政治学者、PTA会長になる』岡田憲治

★★★★☆

政治学者、PTA会長になる」というタイトルに惹かれて購入。個人的期待としては、偉い学者がPTAで無双しようとして散々な目に会うけど、最終的には地道な努力で改革に成功する、というもの。前半に関してはその期待はある程度満たされたものの、後半部分がコロナによる突然の休校もあり、道半ばにして後進に道を譲る、若干尻すぼみな形になったのが残念だった。コロナ憎むべし。

PTAと言うと、いまだにベルマークを集めてたり、役員選挙をくじ引きで決めたり、フルタイムで働く女性が陰口を叩かれながら死にそうな顔で役員をして、増田に「日本死ね」みたいな怨嗟の声を投稿していたりするイメージがあるんだけど、本書の描写を読む限りそのイメージはそんなに外れてなかった。そんな中で火中の栗を拾い、数少ない男性としてPTAの会長を1000日間も勤め上げたのは素直に脱帽する。

著者のバックグラウンドが政治学者ということで、政治学の知見が役立つ場面があるのかと思っていたらそんなところはほとんど無かった。著者の政治学者としての知見はむしろ、PTAの茶番でしかない「選挙」に対する強い拒否反応とそれに対する反発をもたらしているだけで、あまり問題解決には役立っていない印象すらあった。いや、気持ちはわかるのだが。

本書の図式としては政治学云々というより、どちらかというとフルタイムで働く労働者の常識と、それまでPTA運営を献身的に支えてきた主婦層の常識の文化衝突・文化摩擦があり、その間でどう折り合いを付けていくのか?というある意味当たり前の課題を、著者の高いコミュニケーション能力で一つ一つ解決していったと印象が強い。改革への道筋はかなりついていたので、コロナによる突然の休校で全てがストップしてしまったのが読んでいて残念だった。ただ著者はその中でもPTA会長として出来ることはしており、政治学者というより社会人としての有能さが目立つ。著者の改革者としての最大の功績は、定例会議をフルタイムで働く労働者にも参加しやすい時間帯に設定し、後続の男性PTA役員を増やしたところにあるのではないかと思った。その後どうなったのかのフォローアップもあれば読みたいところだ。

本書を読んでいてもう一つ学んだところは、学校の教員がいかに縛られた環境で仕事をしているのか、という過酷さだった。今時個人メールアドレスが無いとか、Zoomも使えない、PCで動画も見れないなんていうのはひどすぎる。少しでも仕事しやすい環境になることを願う。

 

Kobo】『もう一つの「バルス宮崎駿と『天空の城ラピュタ』の時代』木原浩勝

★★★★★

名著。関連書籍をさほど読んでいない自分にも、宮崎駿と仕事をした人物の同時代の証言としては最高級ではないかと思わせるほど上手いしツボを押さえている本だった。とにかく掴みから導入までの構成が完璧すぎて有能としか言いようがない。だいたいこういう本を読むのは宮崎駿のことがもっと知りたいから読むわけで、著者にさほどの興味があるはずがないのに、掴みのエピソードから著者がトップクラフトに就職し、設立されたばかりのジブリにもぐりこむまでの流れを一切の無駄も無く語り、いつのまにか著者自身にも興味を持たせている手腕に惚れ惚れした。読み始めてページを進める手がとまらなかった。

ラピュタの制作期間は1985年6月から1986年7月までの約一年。時代は正にバブル前夜、宮崎駿の名前は「風の谷のナウシカ」の成功である程度は知られていたものの、まだまだ無名である。アニメの地位も今では考えられないくらい低かった。そんな状況の中で宮崎駿と仕事がしたいという一心で東京に出てきた若者が、わき目も振らずに自分の夢に邁進するのである。こんなまぶしい青春ある?

アニメ業界を舞台にした青春物と言えば「ハケンアニメ!」を思い出すが、本作も映像化されれば素晴らしい作品になりそうだ。

宮崎駿に興味のある人だけでなく、爽やかな青春物語を読みたい人にもおすすめの名作である。

 

総評

8月は1冊減量。シリーズ物小説の方が読破数が稼げるかなと思っていたけど、飽きるとペースダウンしてしまうのは否めない。逆にノンフィクションのPTAもバルスもサクッと読めたので内容に興味が持てるか否かが読む速度に関係してるかもしれない。

あと今月は購入図書の洋書率高めになってしまった。洋書を読むペースがそもそも遅いし、読めない日もあるので明らかに買いすぎているのだが、翻訳は高いし訳の信頼性もわからないので迷うとどうしても買ってしまう。とりあえずもう少し洋書を読むようにしようと思う。