積読ダイエットチャレンジ(残1519冊)

日々積み上がる積読メタボを2030年までに解消するレコーディング読書ログ

2021年12月に買った本(10)・読んだ本(11)↓1冊減量

2021年12月に買った本(10)

今月の購入冊数はトータル10冊。リアル3冊、電子7冊の内訳。今月は少な目に抑えようと思っていたので、5~6冊ほど買うのを我慢した。ポーカー本も日英で一冊ずつ目星はつけたんだが、もう少しリアルでの試行錯誤を積み上げた方が理解が深まるだろうし、しばらくは購入を見送る方針。あとは風水と大航海時代に対する興味が湧いたので、いくつか物色したものの、風水関係の本を一冊だけ購入するにとどめた。風水本は前にも購入したものがあるので、それを先に読むべき、と言い聞かせた。大航海時代関係も何か買っている気がするのでそれをまず読もう、ということである。それで気が晴れるかもしれないし。欲しくなった時に、昔買った本に類書が無いか考えると少し欲望が抑えられる気がする。ピョコタン絡みでピョコタンの漫画が載っているゲームラボの新刊も買いたくなったが、雑誌なのでわりと簡単に欲望が抑えられた。自分の中で「単行本>雑誌」の序列があるかもしれない。そういえば雑誌は何か興味のあるテーマの特集号とかで無い限り買ったことない。とは言え1980年代のログインとか、なんの変哲もない号を紹介したYoutubeを見たりしているので風俗資料的価値が出ると俄然興味がわくタイプ。こういうのスノッブって言うんでしたっけ?まぁ1980年代のログインなんか何千円もするから買わんけど。

 

Kindle 】『樹木たちの知られざる生活 森林管理官が聴いた森の声』ペーター ヴォールレーベン, 長谷川 圭

口コミで購入。先月読んだ「ワンダーガーデン」でドイツの黒い森に興味を感じていたのでタイミング良かった。黒い森の話が出てくるかは不明なのだがドイツ人の著者で森林の話なら黒い森が出てこないなんてことはないはず。

 

Kindle Unlimited】『なんとかする 子どもの貧困』湯浅誠

「シングルマザーの貧困」の関連書に出て来たのでダウンロード。レビューも高評価。シングルマザー関連書籍は他にも沢山あるが、Amazonレビューがそうよくないので読むのを躊躇する。別にお金持ちではないので貧困問題は完全に他人事というわけではないけど、「シングルマザー」とか「こども」の、となると独身中年男性の自分とは別カテゴリの話になるのでこういう本で情報を摂取するしか縁が無い話題なのである。根っこが興味本位であることは否定しない。

 

【図録】『庵野秀明展』国立新美術館

ピョコタンチャンネルの交流会でおススメされてたので購入。最近ピョコタン絡みで何か買うことが多いかもしれない。とは言えそもそも庵野秀明ファンだったていうのもある。ファンになったのはTV版エヴァンゲリオンの最終回以来なので、かれこれ26年か。そんなわたしも近年はすっかり熱が醒め、シン・エヴァンゲリオンすら見ていないんだけど、同好の士に熱く勧められると再燃する思いもある。シンエヴァ見ようかなぁ。

 

Kindle】『星のさいごメシ1~3』おおひなたごう

ピョコタンチャンネルのおおひなたごうとの対談動画を見て購入。おおひなたごうテレビブロス時代に読んでて好きだったけど、ピョコタン絡みは財布の紐がゆるいこと限りない。

 

【文庫】『ものぐさ精神分析岸田秀

高校生の時に読んでドハマりして著作を読み漁ったんだけどすっかり忘れてたところ、何故かここ最近何度か名前が出たり、内容を聞かれたりする機会があった。しかし何しろすっかり内容を忘れていたので何の具体的な説明も出来なかったのでくやしくて購入。アマゾン検索するとKindle版もあったけどクソ高かったので文庫版を注文した。Kindle版の出版社が聞きなれないところだったけど、どういう事情かな?

 

Kindle】『システムトレード 基本と原則』ブレント・ペンフォールド

スキャルピングってカッコいいよね、と時々思い出したように憧れるんだけど、日本の株式市場が開いてる時間は働いているのでデイトレは諦めてた(24/7のFXは怖い)。しかし最近テスタの切り抜き動画を見るようになり、その憧れが亢進してきた上に、何やら日経225先物とかなら夜間でもデイトレ(ナイトレ?)できるらしい。で、投資について最近またぞろ調べはじめた。結果、日経225先物は退場者が続出のかなりヤバイ市場らしいのでおいそれとは手が出せないということがわかったのだけど、例えば米国市場が夏季は日本時間の22時30分から開くので、寄り付きから2時間くらいはちょっと夜更かしすればデイトレできなくもないのでは?と考えた。米国市場は日本と違って1株単位でも取引できるので大きな資金も必要ない。で、やっている人が居ないか検索したら、米国在住者のブログを発見。

nonbiri-kurasu.com

こちらで紹介されていたのが本書。これでコツコツドカンと大きく負けなくなったとのことなので、トレーダーの心構えとして読むと良さそうと思った。原書では続編が2020年に出版されてるので読了後は続編も買うかもしれない。

 

Kindle】『勝ってる投資家はみんな知っているチャート分析』福島理

テスタの切り抜き動画でおすすめされていた。投資を始める前に読むと良いとのこと。テクニカル系の解説本と思われる。

 

【単行本】『日本思想体系 古代中世芸術論』林家辰三郎

ふと平安時代の風水学に興味が湧き、当時の人がどのような典拠に基づいて風水を学んでいたのか検索してみた。何か易経みたいな中国の古の風水書のようなものがあるのかと思っていて、それが読みたいと思って検索したのだが、どうもそういうわけでもないらしい。Wikipediaの関連記事では風水に基づいて作られたといわれる平安京が引き合いに出されているのだが、それも諸説あるというか、逆に平安京のデザインから当時の風水的思考を読み取ろうとして諸説咲き乱れるカオスな状況のようだ。Wikipediaの関連記事で触れられている「山川道澤」とか最初は人名かと思ったよ。こうなったら何か風水学の歴史を解説した本を読みたいのだが、手ごろな本が見当たらなかったので、Wikipediaにも出ていた「作庭記」(これはどうやら平安時代の風水学の典拠の一つと目されているらしい)が収録されている本書を購入してみた。格安だったし。岩波書店のオンデマンド出版でも買えるらしいけど目の玉が飛び出る値付けだった。オンデマンド出来るなら電子書籍化してほしい。

 

2021年12月に読んだ本(11)

今月は11冊読了。購入冊数が10冊なので、かろうじて1冊の減量に成功。やはり月10冊程度が限界かなぁ。月末に近づくと読了可能数が見えてくるので、本の新規購入に対する心理的ブレーキが効きやすくなる。これは来月にしとこう、みたいな。これはまさにレコーディングダイエット。

 

Kindle】『ひとりずもう』さくらももこ

★★★★☆

お笑い芸人の誰かの座右の書になっているのをどこかで知って購入した気がする。名前が思い出せないので別にそのお笑い芸人のファンとかではなかったと思うんだけど、誰かにそう思わせる本って読みたくなる。さくらももこのエッセイを読むのは多分「うみのさかな&宝船蓬莱の幕の内弁当」以来かもしれない。「うみのさかな&宝船蓬莱の幕の内弁当」はAmazonレビューを読むと内容がヒドイとか、今なら炎上必至とか書かれているけど、当時は笑い転げて読んだ印象しかないんだなぁ。内容は全く覚えていないけど相当悪ノリしてたというイメージだけは脳に刻まれている。あまりに面白くて友達に借りて読んだのに後日自分でも買ったくらいだ。著者の一人がさくらももこと知ったのも結構後になってからで、正直さくらももこを見直した記憶すらある。うみのさかなってさくらももこだったのかよ!!みたいな。それはさて置き、本書はさくらももこの学生時代から漫画家デビューするまでのあれやこれやを時系列で並べた連作エッセイ集。小学生時代からの思い出が場面ごとに切り取ったように配置されているので、まるで物語を読んでいるような感覚もあった。前半は女学生のバカ話的でさほど面白くないのだが、キャラクターが徐々に肉付けされ、主人公が置かれている状況も次第に伝わって来て、後半の漫画家になる夢に挫折しかかる話からは、それまでの積み重ねがあり思いのほか感情移入しているため一気呵成に読み進められた。前半のいつもの感じのエッセイが良いビルドアップになっているのが、意図してかわからないけど巧い構成と思った。色々あったけど最終的に夢を叶えた、という話なので、誰かの座右の書になっていて全然おかしくない。結局自分に出来る事でハマる場所を見つけろ、ということかなぁ。

 

Kindle】『Fear and Loathing in Las Vegus』Hunter. S. Thompson

★★★

たぶんジョニー・デップベニチオ・デル・トロの映画を見て原作を買ったと思うんだけど映画を見た記憶がスッポリ無い。まあ20年以上前の映画だしなぁ。お話の内容はレースの取材にかこつけて語り手の記者がクスリをキメながら自称弁護士のサモア人と数百ドル分の薬物をキャデラックに積んでラスベガスへ行く珍道中的なもの。この本、最初の方は何度も読んだ記憶がある。冒頭部の語り手の記者とパートナーの弁護士のでたらめ振りが非常に良い塩梅なのだ。ただこれまでは最初にホテルに到着したあたりで飽きて放り出していた。今回初めて全編読み通して、話の展開がほとんど未知だったので、新鮮な気持ちで読めた。たぶん映画は見てても途中までな気がする。トレイラーを見るとクリスティーナ・リッチが出ており、クリスティーナ・リッチはたしかに見たような記憶があるので途中まで見たんだろうか?なんかホテルの部屋を足首が水に浸かるくらい水浸しにしていたシーンがあったような気がするんだけど、原作にはそういうシーンが無いのだ。個人的に一番楽しめたのは途中でラスベガスを離脱しようとした記者が、速度違反で警察につかまるくだり。警官に追跡されている時に、こういう時のイケてる対処法みたいなことを車を停めるまで長々と自慢げに独白しながら、いざ停車して警官と対面という時に片手にビールの缶を握りしめていることに気付いて、それまでに考えていた申し開きの全てがご破算になる、ていうところ。これはおかしくてニヤニヤした。1972年の話なので空港の描写など今では考えられないくらいおおらか。色々な描写がありえなくて時代の移り変わりを感じることができる。本書の面白さは、基本的に薬物で頭のタガが外れた人が無軌道な振る舞いをして、善意の第三者が引いているのを見て楽しむという感じなので、それが楽しめる人には笑えるところが多いのではなかろうか。もともとはカウンターカルチャーの末路みたいな意味合いがあるみたいなのだが、そのあたりに疎いので風刺なのかはよくわからん。

 

Kindle Unlimited】『シングルマザーの貧困』水無田気流

★★★

興味本位で読み始めたため統計資料や海外との比較、福祉制度の問題点の考察などの記述は目が滑りまくった。興味を持って読めたのは各章の冒頭にある具体的なシングルマザーのエピソードだけ。本書で取材されているシングルマザーのエピソードの中でも特に印象的だったのは、最後の章で紹介されていたシングルマザー。この人は自力でお金を稼ぐ力があり、かなり裕福に暮らしているのだが、そんな女性が離婚に至った経緯がなかなか衝撃的だった。彼女は男性的な規範にとらわれないところに惹かれて派遣社員下方婚をしたのだが、子供が生まれてそれまで惹かれていた夫のゆるキャラ的特徴が逆に父親としての物足りなさに感じられてしまう。最終的に子供の成長に悪影響と見なして離婚してしまうのが、これは男性側はどうすることもできずに辛いだろうなと思っった。この件に限らず女性が離婚に至る決断にはこどもに悪影響があるかどうかが大きくかかわっていて、それまでのシングルマザーの例では男性側に少なからぬ落ち度があったのだが、最後のケースは男性の落ち度ではないだけに逆に人生を感じた。誰も悪くなくてもうまいこと行かないことがある。それが人生、という感じ。個人的に読みたいのはこういうエピソードだけを集めた本だけど、なかなかそういったものは無いね。

 

【単行本】『ウンベルト・エーコの小説講座 若き作家の告白』ウンベルト・エーコ

★★★

ウンベルト・エーコは昔熱心に海外小説を読んでいたころにハマった。『薔薇の名前』『フーコーの振り子』『前日島』と読んで『前日島』の面白さでウンベルト・エーコ大好き~という感じになった記憶。『薔薇の名前』は映画もあったし、ミステリ仕立てで比較的わかりやすかったんだったけど『フーコーの振り子』は正直ようわからんかったような気がする。それなのにあの分厚いの良く読んだなぁ。若かったなぁ。とは言え、そもそもその後小説をあまり読まなくなったので疎遠になり『前日島』以降の著作があったのも本書を読んで初めて知った。検索すると『前日島』の次作『バウドリーノ』が翻訳されたのが7年後なのでそこまで待てなかったのも無理ないか。本書は村上春樹の創作論的な本のAmazonレビューを読んでいてサジェストで類書にあげられていたのに興味を引かれて購入した気がする。懐かしさもあって購入したのだが、なかなか理解の難しいところも多かった。元々はアメリカの大学で行った招待講義で、それをまとめたのが本書ということらしい。一番わかりやすかったのは最初の章「左から右へと書く」で、ちょっと読むだけのつもりがするすると読めて思わぬ夜更かししてしまった。ウンベルト・エーコの創作手法について最も直截に触れられているのもこの章で、『薔薇の名前』や『前日島』をどのように構想したのか具体的に述べられている。ウンベルト・エーコは作家デビューが遅かったのもあってか、36年のキャリアで6作しか小説を残していないんだけど、『薔薇の名前』を書く時に登場人物すべての肖像画を作成したとか、『フーコーの振り子』を書く時に深夜パリの街を録音機片手になんども歩いて視界に映るものを全て吹き込んだとか、尋常でない努力というか道楽?をしたことを告白している。それは時間かかりますよね、と言うしかない。わたしもシナリオを作る時は当時の新聞を調べたりすることはあるけど、舞台にする場所をそこまで精緻にリサーチする時間もお金も無いので、楽しそうでうらやましさと親近感を勝手に感じた。2章以降は「シニフィアン」「シニフィエ」「テクスト」とかよくわからん言葉が頻出して急速に理解度と親近感が落ちた。もう興味のないことを理解する努力の振りすらもしたくない年頃なのかもしれない。3章はシャーロック・ホームズとか作品世界を離れても成立するようになったフィクションキャラクターについての蘊蓄(ウンベルト・エーコアンナ・カレーニナをよく例に出していたけど、あの本そんなに有名か?世代間ギャップを感じた)。4章は列挙型の表現手法についての偏愛がタラタラと述べられている。ここはわからんでもなかった。それにしてもウンベルト・エーコは好きなんだけど何言っているのかわからんことが多すぎる。話し方とかクソオタクだったらなおさら好きだなぁ。

 

Kindle】『星のさいごメシ1~3』おおひなたごう

★★★☆

おおひなたごうテレビブロスの連載を昔読んでた。その頃はかなり楽しんで読んでいた記憶はあるんだけど、単行本で読んだ記憶が無いのでひょっとしたら本を買うのは初めてかも。アマゾンで著作ページを眺めると「俺に血まなこ」というタイトルが脳にヒットした。テレビブロスで連載していたのはこれっぽい。なんかぼやーっと当時の絵が浮かびそうで浮かばない。1994~1995年くらいか。その後おおひなたごうがチャンピオンに行ったのはどこかでへーっと思った気がするからうっすら記憶にあるけど、1999年頃にインターネットを始めてからは少年誌というか雑誌自体ほとんど読まなくなってしまったし、テレビも見なくなっていたので当然テレビブロスも読まなくなっていた。観測範囲から外れてしまったのですっかり疎遠になってしまっていたというわけだ。そこで不意のピョコタンチャンネルでの対談である。おおひなたごうがまた私の観測範囲に戻って来た。以前からチラホラ名前が出ていたので、そういえばおおひなたごうって今何してるんだろう?なんて思ったりはしたけど、動画で見るとインパクト大だなぁ。顔自体初めて見るので、疎遠になっていた友人と再会というのとは少し違うんだけど、それに近い懐かしさを感じた。それにしてもギャグマンガからグルメ漫画の領域に手を伸ばしていたとは知らなんだ。内容は面白い。死ぬ前に食べたい物って何?というテーマだから毎回鉄板の見どころが作れるのは強い。これはアイデアの勝利。ただ各話に登場する「最後めし」は外食がメインだったけど、個人的にはお店を紹介されても、そのお店がいつまであるかわからんし、遠くならそんなに行く気しないので、手料理オンリーにした方が再読性が高くなったのではないかと思った。ピョコタンチャンネルの対談動画では、ピョコタンから内容に関係ないギャグが邪魔になって一般層を遠ざけているのでは?という意見がでていた。それも非常によくわかるが、逆にこの無意味なギャグが無くなるとこのお話を漫画でやる意味が無くなってしまうような気もした。個人的にカメラマンの中川絡みのギャグがツボにハマって笑えたし、わたしはこの方向を推し進めてほしいと思う。グルメ漫画だけでなく、取材に基づいた学習漫画みたいな展開もありかもしれない。巻末のアシスタント陣によるおまけマンガも思いのほか面白かった。個人的に一番好きなのは1巻のカワタニダイチのおまけマンガ。これはなんか絵が好き。馴染めるというか、一コマ一コマに絵の魅力がある。特におおひなたごうキャラの髪型がコマで不安定なのがかわいいんだなぁ。

 

【単行本】『勉強大全 ひとりひとりにフィットする1からの勉強法』伊沢拓司

★★★

何年か前のカドカワ株主優待でゲット。学習法に興味があるので「勉強大全」というタイトルに惹かれて選択した。やっと読み始めたのだが、巻頭から著者の軽い写真集が付いていたので何?と思う。なぜ「勉強大全」というタイトルの本が著者の写真集から始まるのかな?帯を改めて見ると謎が解けた。「東大卒クイズ王」。なるほど有名人らしい。それはそれで実績だし信頼性も上がるので素晴らしい。「東大卒クイズ王」ということだけど本書では「東大卒」によりフォーカスしており、紹介される勉強法の対象は主に受験だった。(クイズの勉強法にも若干触れてあり、知識はあるが早押しが苦手で勝てなかった著者が勝つためにした工夫などなるほどと思えるものがあるので個人的にはこちらにフォーカスしたものを読みたいと思った。)想定読者層は大学受験をひかえた高校生と思われる。たぶん企画会議とかで番組視聴率から受験生の数を推定して、ここを狙っていきましょうよ、みたいな感じのプレゼンがあったのだろう。そういうことで巻頭のミニ写真集なのだろう。ファンの高校生にどれだけ刺さってるのかよくわからんけど、あるいは出版社にキャラクターを売る商法みたいなのがあり、これはこれから著者のキャラクターを売り込んでいく戦略の第一歩なのかもしれない。あんまりキャラクターで売られている著者の本を読まないのでわからんけど、DaiGoの本とかもミニ写真集が付いてそうだもんな。まあどういう意図にせよ本の作りが著者のファンで受験生というピンポイントなので、それ以外の読者はなかなか読みづらいかもしれない。私はファンでもなければ受験生でもないので、自分のような部外者にも何か得るものがあるか?という視線で本書を読んだ。しかし書籍の想定読者層からズレてしまうと、どうしても斜めに読んでしまうんだなぁ。若干辛口の評価になってしまうかもしれない。結論から言うと、受験生でない人が読んで得られるものは決して多くない。まず「大全」というと網羅的な内容を想定するがそういったものでは全く無いのである。内容的には自分の欠点に即した勉強法を見つけるための心構えを紹介したようなものなので、具体的な勉強法を期待して読むと肩透かしを食らうだろう。「勉強大全」より「東大卒クイズ王が教える勉強の極意」みたいなどストレートなタイトルの方が良かったのではないだろうか。それはそれで一読の価値があるし、クイズ王という超特殊なスキルから普遍に通じる勉強法を提示するという切り口も面白い気がする。ではこの本に何か得るものが無いかというと、そうではない。ただ、本書からどれくらいお持ち帰りできるかは読者側の咀嚼力にだいぶ左右されそうだ。個人的なところで言うと「一日一点主義」という考え方がかなり参考になった。私は受験生ではないのでテストを受ける機会はないけど、今している勉強が結果を出す現場において少しでも好影響を与えているのか?漫然とルーティンで勉強していないか?常に現在の勉強法を評価して見直す姿勢というのは非常に大切なポイントで、テストのない分野の勉強をしている時にこそ重要になる考え方と思う。著者はまだ若く、能力的にも非常に高いものがあると思うので、ぜひ芸事や実学など様々な分野にもチャレンジして、そちらで勉強法についての知見を更に深め、新たな「勉強大全」を著してほしいところである。

 

Kindle】『My Voice Will Go with You: The Teaching Tales of Milton H. Erickson』Sidney Rosen

★★★☆

購入したのはくたびれはてこのブログで紹介されてたのがきっかけだったと思うんだが、検索してみたらブログが非公開にされていたので間違いかも。たしか離婚を決めた夫婦の夫の方ににエリクソンがしたアドバイスについてのエピソードが紹介されていたと思う。これは本書のキラーエピソードと思われるので、ここで再度紹介してみる。この夫婦はともに聖職者の家庭に育ち、どちらも非常にお堅い教育を受けて来た。そのせいか、初夜の営みがとてもぎこちなく、子供こそ出来たものの何のよろこびも無いものだったと言う。結局この夫婦は話し合いにより「友好的な離婚」をすることを選ぶ。エリクソンは夫の話を聞いて、それはたしかに不幸な結婚であるので「友好的な離婚」をするための手順を医学的アドバイスとして行うことを提案する。具体的な手順とはこうである。まずホテルを予約して個室のダイニングルームと部屋を借りる。次に看護師を雇い、赤ん坊を預ける。妻に「友好的な離婚」をするために必要なことと説明し、彼女を予約したホテルへ連れ出す。お金はいくらかかっても良いから、個室のダイニングルームで素晴らしいディナーを、キャンドルの明かりでとること。そしてこれは特に医学的処方として伝えるのだが、シャンペンを一本頼み、必ず二人で飲むこと。食事を終えたら―遅くても22時前に終えること―フロントへ行き予約した部屋の鍵を受け取る。ベルボーイがフロアへ案内してくれたら5ドル札のチップを渡し、「Scram」と言うこと。ベルボーイはあなたの言うことを理解するだろうから、それから部屋へ行きなさい。ドアの鍵を開け、妻を両手に抱きかかえてからドアの敷居をまたぐ。彼女を両手に抱えたままドアの鍵をかけて、ベッドのそばまで歩き、そこでおろしなさい。それから彼女に、「最後にさよならのキスを」と言い優しくキスをし、そして「今のは君のためだったから、もう一度だけ、今度は私のために」と言う。彼女の膝に手を落としたら、キスを少しだけ長引かせなさい。膝の手を撫でおろし、彼女のスリッパを脱がしなさい。それから彼女に、「二人のためにもう一度だけキスを」と言い、彼女の服の下に手を入れて撫でおろし、それからもう片方のスリッパを脱がしなさい。その後の動きはシャンペンと二人の内分泌の働きにより自然と決まるでしょう。ストッキングを脱がせて、キスをしなさい。夫はこのアドバイスを忠実に実行したと思われるが、結果どうなったかは本書を読んでたしかめてほしい。私が知りたいと思ったのは、どのようにしてCrippleだったミルトン・エリクソンがこれほど巧みに女性を誘惑する術を身に付けたのかということだ。不幸にして自伝を書かずに他界されたので、本人の証言はもう得られないが、そちら方面に詳しい評伝があれば読みたい。本書はこういったエピソードが山のようにあるのだが、中にはそんなにうまく行くもんですかね?と疑問に感じるものも当然多数ある。アネクドートはどうしても語られる過程でニュアンスが抜け落ちて定型化してしまうものかもしれないのだけど、本書で紹介されているエピソードも、一体どこまで事実なのか、今となってはわからない。ミルトン・エリクソンの伝説的業績を信じる人にはかけがえのない名著だろうし、そうでもない人にはそれなりの本と言える。さして難しい英語で書かれているわけでもないので英語に抵抗が無いひとは原書で読むのがおすすめである。何より翻訳に比べて一回り安い。

 

Kindle】『樹木たちの知られざる生活 森林管理官が聴いた森の声』ペーター ヴォールレーベン, 長谷川 圭

★★★☆

ドイツでフリーランスの森林管理官を務める著者による、樹木の生態についての啓蒙書。『樹木たちの知らぜざる生活』というタイトル通り、あまり一般的ではない樹木たちの生態を詳細に語っている。個人的にはドイツの黒い森に興味があったので、具体的な森の成り立ちやそこでのエコシステム、人々の関わりなどが知りたかったのだが、そいういうエピソードは少なく、ブナやトウヒといった樹木の生態について、それらがどのように環境に適応して生きているのかについてが主だった内容だった。樹木間のネットワークや情報伝達手段についても書かれているのだが、いちいちエビデンスを提示して説得力を持って語るというスタイルではないため、それってあなたの妄想ですよね?、というツッコミに対する対処が出来ていないようのが気になった。しかし、こちらに樹木に対する科学的な知見にたいする知識もなく、著者の記述がどこまで妥当なのか、どこからオカルトの領域に踏み込んでいるのか判断がつかないため、常に留保付きで読むことになった。ただ樹木に対して驚くほど無知であることだけは自覚できたので、より科学的な証拠に基づいた説得的な啓蒙書か、あるいはまるで反対の、森のきこりが感覚と経験則だけで樹木の生態について語りました、みたいな本が読みたいなぁと思った。とは言え樹木に対する見方を一変させる世界観を提示している本ではあるので、一読の価値はある。

 

Kindle】『督促OL 修行日記 (文春文庫) 』榎本まみ

★★★★

職業物が好きなので買った。借金の督促というあまり知られていない世界なのも良い。前半はおそらく意図的にスカスカに書かれていると思うのだが、それでもブラック業務の描写がきつい。いや業務そのものというより、朝から終電間際まで働いて、ロクに回復もできず翌朝出勤し、彼氏とも別れ、さして成果も残せず、感謝もされず、しかし他に選択肢がないのでブラックな業務に邁進せざるを得ないという闇を見るのがきつい感じ。また著者は仕事をネタにした4コマ漫画を描いており、その中で自身をうぶな新人OL的なキャラクター化をして描いているので、語りの文体も素の体験談というより「うぶな新人OL」というキャラクターを通した「エンターテイメント」な体験談になっているのが個人的に読みづらかった。本書も半ばを過ぎると、何もできなかった著者が徐々に技を身に付け、ブラック極まりない業務に対応できるようになってくる。そのあたりから読みやすくなり、また著者の素顔も見えてきてページをスワイプする手も捗るようになった。論理学の本をヒントに行動を変えたり、20万円支払ってビジネスセミナーに参加したり、OB・OGの推理小説研究会のパーティに参加して、自分だけ成果を残せていないことにみじめな思いを味わったり、「うぶな新人OL」というキャラクターから少しはみ出すような描写が個人的にはリアルで面白かった。本書の白眉は最終章である。内容的にはそれまでのまとめなのだが、前半のスカスカ感がなく、しっかりとした密度で借金の督促という業務について、また著者がその困難にどのように立ち向かったのかが振り返られている。個人的には前半の業務の描写から伺える闇が深く、よくこんな仕事を続けられたなと思ったのだが、その闇の中でのともし火のようなエピソードも付け加えられていて、そういう職場での心遣いがあったから著者も仕事を続けられたのだなぁとホロリと来た。それにしても、コロナ禍でコールセンター業務も在宅勤務に移行したと聞いたのだが、その後状況は改善したのか、悪化したのか、現況が気になるところである。