積読ダイエットチャレンジ(残1519冊)

日々積み上がる積読メタボを2030年までに解消するレコーディング読書ログ

2022年3月に買った本(2)・読んだ本(1)↑1冊増量

3月は全然忙しく無かったものの、1月~2月のあおりで一度崩れてしまった「本を読む習慣」を立て直せないままだらだらと来てしまった。したがって買った本も読んだ本も記録を付け始めてからの最低レベルを更新。いったん歯車が狂うと立て直すのにホントに苦労する。どんなことでも一度習慣化できると慣性がついて楽に続けられるんだけど、習慣になってしまうと別に楽しくなくなるので飽きてしまうんだな。で、一度それが崩れると、もういっか、てなる。これを再始動させるには、もう一度初心に戻って、そのことそのものの楽しさにフォーカスするしかない気がする。幸い今月読んだたった一冊の本がアタリだった。おかげでこれからまた本を読む楽しさが蘇ってきた気がする。

 

2022年3月に買った本(2)

【単行本】『Unhallowed Metropolis』Atomic Overmind Pres

WikipediaでNeo-Victorianのエントリを眺めてたら(読んでない)、そのものズバリなTRPGルールブックがあるらしいのを発見、てことで何らの前提知識も無く購入を決断。Amazonを見ると新品の扱いは無くてusedでも価格が軒並み一万円オーバーだったのでebayで安めの品を落札した。でも折からの円安だし送料もあるしであんまりお得でもなかったかもしれん。しかも既にRevised版が出てるらしく、Amazonで一万円超えてたのはそっちの方だった。Revisedは中身見て良さそうだったら買うかも。

 

Kindle】『True Grit』Charles Portis

コーエン兄弟が2010年に再映画化したジョン・ウェイン主演の「勇気ある追跡」の原作小説。映画は「トゥルー・グリット」も「勇気ある追跡」もどちらも見てないのだけどお話が面白そうだったのでポチった。西部劇小説はまったく掘ってないので金脈があるかもと期待している。

 

2022年3月に読んだ本(1)

【単行本】『うらおもて人生録』色川武大

★★★★★

人生の先輩がざっくばらんに人生の生き方を話してくれた、という感じの本。裏面版「君たちはどう生きるか」みたいな。本書は著者が新聞か雑誌かに連載したものの書籍化らしく、具体的な読者層を意識した語り口が、身内で一番親しい親戚のおじさんが話してくれてるような親近感を生んでいる。わたしは著者のことはもっぱら阿佐田哲也名義の麻雀小説でしか知らなかったんだけど、第一話から自己開示がうまくて、一瞬でこのおっさんは信用できる、と思わされてしまった。この本を読んだら誰でも著者のことが好きになるのではないだろうか。ひとつひとつのエピソードに著者の飾らない人柄が感じられるし、平凡とは程遠い人生体験を通して体得した著者独特の哲学には高い説得力がある。ぶっちゃけ本書に書いてある知見のほとんどは著者の賭博体験から引き出されており、「運」、「運の流れ」など、それ迷信でしょうとしか言いようがないものなのだが、その後の社会人生活、作家生活に裏付けられているため、安易に否定し難い迫力があるのだ。正直理解できない部分もあるが、繰り返し読みたくなった。

2022年2月に買った本(2)・読んだ本(3)↓1冊減量

2022年2月に買った本(2)

今月は忙しくてほとんど本も買ってない。こういう月もある。

 

【単行本】『うらおもて人生録』色川武大

麻雀放浪記は読んでいるけど色川武大名義の作品はあまり読んでいなかった。昔何かのエッセイ集を読んだかも?程度の認識だったんだけど、この記事を読んで面白そうだったので購入。電子版もあったが全集で少しお高いので単行本を購入した。

president.jp

 

【ペーパーバック】『Gaslight Equipment Catalogue (M.U. Library Assn. monograph, Call of Cthulhu #0319) 』R. Basler

Jack LondonのPeople of the Abyssを読んでいたらNeo Victorianなシナリオを作りたくなったので資料として購入。 

 

2022年読んだ本(3)

Kindle】『廃市・飛ぶ男』福永武彦

★★★

高畑勲の「柳川掘割物語」でも取り上げられた柳川市を舞台かモデルにした短編「廃市」を読みたくて購入したものの、文庫でも持ってることに後で気付いた。廃市は大林宣彦の映画が印象的だったので期待感高目で読み進めたのだがそれが裏目だったのか、いまいち乗り切れず。作者は死にゆく町の退廃、といったニュアンスを出そうとしていると思うのだが、コアになる物語の引きが単なる恋愛関係のもつれにしか見えないので、ネタばらしでどっちらけてしまった。因習と悲恋は相性が良い気がするのだが、どうでも良いことで死ぬの生きるのと言っているようにしか受け取れなかった。ちなみに収録作品で一番印象に残っているのは「飛ぶ男」。後半の都市崩壊シーンがなんか大友克洋っぽい。大友克洋のアニメーション作品になってておかしくないカタストロフ感があり、こちらは全く期待していなかっただけに楽しめた。

 

Kindle】『Lassie Come-Home』Eric Knight

★★★★☆

名犬ラッシーの原作小説。実は子供の頃コリー犬が飼いたくてしかたなかった。それは本作のドラマ「名犬ラッシー」をどこかで見たからなんだけど、見たのが小さい頃すぎたため内容については全く記憶に無かった。思い出の中では大草原の小さな家と完全にごっちゃになっており、Wikipediaで調べるまで名犬ラッシーNHKで夕方に放送されていたと勘違いしていた。日本での放送は民放だったらしい。Youtubeでテーマ曲も聞いてみたけど全く記憶にないのでひょっとしたらちゃんとした番組を見たことは無かったのかも。Jack LondonのWhite Fangを読んで動物文学の魅力を再確認した時に、そういえば名犬ラッシーって原作があるのでは?と思い付き検索したところ発見という流れだったので、買ってすぐに読み始めた。White Fangがスリラー映画的なはじまりだったのに対してこちらは世界名作劇場的な雰囲気が濃厚。たぶんラッシーを飼っていたのが炭鉱夫の一家だったり、それを買い上げたのが貴族の頑固爺さんだったり、その頑固爺さんに小生意気な孫娘がいたりと世界名作劇場にうってつけのキャラクター設定なのが大きいかもしれない。貴族の頑固爺さんの孫娘がラッシーの脱走に大きな役割を果たしていたり、その決定的なシーンを映像的に描いているのもドラマチックだ。ここはベイブの牧羊犬コンテストの最後でおじいさんが掛け金を落とすシーンを連想した。掛け金を落とす小さな音が観客席まで響き渡るあの名シーン。こういったシーンは作品中にいくつもあり、極めてドラマ向きの小説だと思った。しかも話をいくらでも膨らませて続けられる股旅ものという構成。これは最強。道中ラッシーが出会う人々の描写も多種多様ながら当時の英国を活写していて良い。個人的にはスコットランドイングランドを隔てる川を渡ったあとに出会う老夫婦のエピソードがじんと来た。オリジナルのシリーズはシーズン19まで続いたとwikipediaにあるので、さもありなん。その割に実際に名劇化された時に途中で打ち切られたのは残念と言うほかない。ただポテンシャルは高いのでシーズン19まで続いたドラマシリーズを研究して、美味しいところだけより抜いて再度アニメ化してもよさそうな気はする。

 

【単行本】『東大医学部在学中に司法試験も一発合格した僕のやっている シンプルな勉強法』河野 玄斗

★★★

クイズ王伊沢拓司の「勉強法大全」とどっちが先なのか調べたらこっちの方が半年くらい早かった。こちらは東大医学部在学中に司法試験合格という輝かしい経歴を背景にしての勉強法出版なので、個人的にはよりブランド力が高い気がする。ターゲット読者層はやはり受験生らしく、受験勉強の勉強法についてがメインである。特に前半部分は受験勉強に対するモチベーションをいかに維持するかについてかなりのページが費やされていた。受験勉強なんかやりたくてやっている人はそんなにいないので、モチベーションの維持が重要になってくるということだろう。それぞれの科目の攻略法についても具体的な参考書名が挙げられるなど、かなり具体的なノウハウが語られているので受験生にはうれしいのではなかろうかと想像する。著者は医学部卒の司法試験合格者とは言え、法律知識のある医師ではなく、医師資格のある法曹を目指しているらしい。ただwikipediaで見るかぎり司法修習は受けていないようだ。著者はその後数検や英検なども1級を取得し、現在は公認会計士資格にもチャレンジしているらしい。資格コレクターと化している感がある。もったいない気もするが、試験に強いという才能を活かしているということだろうか。いずれそれらの経験を活かして更にアップデートされた勉強法本が上梓されるのかもしれない。勉強法本としての本書は個々の科目の具体的な勉強法にフォーカスした結果、広い意味での勉強法について普遍的な目線が薄くなっているように思う。資格コレクションが一通り終わり社会での実務経験を積んだ著者がどのように勉強法をアップデートして見せてくれるのか楽しみである。

 

2月の感想

今月は期限ありの用事があり、そちらに時間をだいぶ取られた。実際に費やした時間はそれほどでもないんだけど、一区切りつくまで気になってしょうがないというか、常に頭の一部をその事が占拠している状態なのが厄介だった。したがって本もほとんど読めていない。この状況はしばらく続くので3月もあまり本を読めないかもしれない。まあこういうこともある。そんな中でもとりあえずマイナス1冊は達成したので良しとする。

 

 

 

 

2022年1月に買った本(6)・読んだ本(6)増減無し

2022年1月に買った本(6)

新年だからというわけでは無いけど、楽器練習本(フィンガードラム)とお絵描き練習本を買った。練習を習慣化できるかがキモである。楽器練習は経験があるし、継続も出来ているので多少の目途が立つけど、お絵描きは何度も挫折している鬼門だ。今年はなんとか挫折せずに続けられますように。あと今月はそんなにセーブしたつもりもないんだけど月間購入冊数が最少記録を更新。この調子で今年は買う本を抑え気味に行きたい。

 

Kindle Unlimited】『DTMerのためのフィンガードラム入門 「指ドラム」のはじめ方と練習方法がわかるガイドブック』スペカン

Ableton Push2を買ったので、せっかくだからフィンガードラムを学ぼうということでセレクト。

 

Kindle】『風水で読み解く日本史の謎』

風水本は蔵書にあるのを読むまで新しいのを買わないつもりだったんだけど、安かったのでつい買ってしまった。風水はインテリア関係は多いけど、地形・地勢にフォーカスしたものはあまり無い気がする。

 

Kindle】『漂流』吉村昭

『映画 テレビ シナリオの技術』の脚色の章で著者が東京ー大阪間の新幹線で夢中で読んだ小説(脚色をオファーされた)として、無人島に漂着してアホウドリを食べて生き延び、十数年後に自力で舟を作って生還した人の話を紹介しているのだが、結局脚色の話がポシャッたせいかタイトルが明かされていない。検索して調べたところどうやらこの本らしいということで購入。吉村昭は骨太でいい。

 

Kindle】『会って、話すこと。――自分のことはしゃべらない。相手のことも聞き出さない。人生が変わるシンプルな会話術』田中 泰延

わたしはコミュニケーション術関係の本を買う敷居がだいぶ低いと思う。この本は「自分のことも話さない、相手のことも聞きださない」というコンセプトが面白いと思ったのでAmazonレビューで一部酷評されているのが気になったが購入してみた。

 

Kindle】『まほり 上』高田 大介

これを読んで購入。面白そう。

kadobun.jp

 

【単行本】『たてなか流クイックスケッチ』立中順平

お絵描きは何度かチャレンジして挫折してきたスキルの一つで、再チャレンジを考えていたところ評判の良いお絵描き本を見かけたのでまた購入してしまった。本書はkindle 版もあるが、iPad でお絵描き練習しようと思っているので敢えて単行本版を購入した。

 

2022年1月に読んだ本(6)

今月の収支はプラマイゼロ。本当はもう一冊読める計算で読みかけの短編集を数カ月のインターバルを経てKindleで再開していたんだけど、最初の方の何作品かを読まずに飛ばしていたのをすっかり忘れていた。月末に最後まで読んで目次を見直してたら読んだ記憶の無い話が三つくらいあるのに気付いて後の祭り。文学よりの短編小説だったので読むのにやたら時間がかかるし、計算を見誤ってしまった。まあ別に読了数を稼ぐために本を読んでいるわけではないのでいいのだ!

 

【DMM Books】『アルゴリズム思考術 問題解決の最強ツール』ブライアン・クリスチャン、トム・グリフィス、 田沢 恭子

★★★★★

これは電車の中だけで読んでたため読了までやたら時間かかった。実はまだ注を全部読めていない。注は章の終わりごとにも記載されていたのだが、それに収まらなかったものが巻末にどっさりあった。個人的には多少流れはぶった切っても注はこまめにまとめてあった方が好ましい。いきなり苦言からはじめてしまったが、これは名著。まず日常的に現れる諸問題についてのアルゴリズムが手際良く紹介されていて、しかもそれが門外漢にも網羅的に感じられるほどバラエティに富んでいる。例えば最適停止問題は「理想の結婚相手を見つける方法」みたいなテーマで私も何度か聞いたことがあり、あー「何人見逃して、それ以降に出会う最高の相手を選べ」みたいなあの話ね、と思ったら細かい条件の違いで様々なバリエーションがあり、しかもそれによって最適な戦略も異なるということが非常に詳しく、かつ歴史も含めて紹介してくれている。問題の解法だけでなくそれにまつわる研究がどのように発展したかもわかるようになっている。その上これが様々な問題とそのアルゴリズムについて行われているので、アルゴリズムの全体像はこれを読めばだいたい把握できるのでは?と思わせてくれる。ランダム選択の意外なまでの強さとか、解けない問題を「緩和」して一旦解いてみてそこから解法をさぐるとか、読んでいてなんとなくエキサイティングなことが沢山書いてあった。電子書籍版読了後に文庫版も買ったので今後最低7回は読むつもり。やっぱり星5を付けた名著は7回は読みたいね。

 

【単行本】『映画 テレビ シナリオの技術』新井一

★★★★★

これは名著。なぜかというと『映画 テレビ シナリオの技術』というタイトルそのままの内容が、非常にわかりやすく具体的に書かれているから。タイトルから期待される内容がそのままブレずに提供されている本は名著以外の何物でもない。羊頭狗肉ならぬ羊頭羊肉。素晴らしい。刊行は1986年なので非常に古いのだが、映像による物語の作り方という根幹は変わらないため現在でもなるほどと思える記述が多い。ただ本書ではタイトル通りテレビか映画を目標とした脚本作成方法と、それを作成する能力を鍛えるためのトレーニング法など主な内容にしているため、それ以外の媒体(Youtube, TikTokなど)を目標にしている場合は別途ほかの書籍や動画にあたった方が良いかもしれない。ただ映像で物語を語るということをテーマにするなら媒体が何であれその根幹は変わらないので本書は非常に使える参考書になりそうだ。本書の特色は脚本のトレーニング方法として「20枚シナリオ実習」を提案しているところだ。なぜ50枚でも100枚でもなく20枚なのか?は、20枚あれば一つのシークエンスが過不足なく描けること、20枚を楽に書けるようになればシークエンスの積み重ねであるテレビや映画の仕事も楽に書けるようになるという点が挙げられている。またシナリオ教室という制約の多い環境で、教師から適切なフィードバックを短いサイクルでもらうため、という側面も大きいようだ。著者は週に2本20枚シナリオが書けるようになれば著しい実力の向上が望めるとしている。私はこういう修行みたいなのが好きなのでやってみたくなった。ただ週に20枚を2本は仕事を辞めないと無理だと思うので現実的ではないなぁ。個人的に本書で面白かったのは2章の「映画製作の工程」だ。これは脚本家が映画製作の工程全体でどういった役割を担っているのか?のJob Descriptionを行い、脚本家志望者の持っていそうなイメージ・認識とのすり合わせを行っている章なのだが、1986年当時のテレビ業界事情が垣間見れて良い。たしかに昔は単発の2時間ドラマ枠が結構あったような気がする。今もあるのかわからないが、減っているのではなかろうか。テレビで脚本家がデビューする敷居は昔より上がっているのかもしれない。とは言え現代はテレビや映画以外の道があるので作品を発表する敷居は大幅に下がっている。映像作品を作りたい人には非常にいい時代になってきている。そういった層にも本書のコア部分は有用と思う。

 

Kindle】『勝ってる投資家はみんな知っているチャート分析』福島理

★★★☆

テクニカル分析で使うチャートと売買シグナルについて全般的に概説された本。それが知りたくて購入したので必要十分という感じ。テクニカル分析で勝っている投資家のインタビューとかも読みたいと思ったのだが、それは本書の任ではなさそうだ。漫画も含めて全体的にスマートにまとまっているのだが、個人的には西原理恵子以外のイキの良い若手でもっと個性的でアクの強い漫画家と組んでた方が面白くなったのではないかと思ったけど、それもやっぱり任ではなさそうではある。

 

【文庫】『にあんちゃん』安本末子

★★★★

むかしスカパーの日本映画専門チャンネルで古い邦画を見まくっていた時に、偶然今村昌平の映画「にあんちゃん」を見た。話はおぼろげにしか覚えていないのだけど、どことなく宮崎駿の映画を彷彿とさせる、爽やかながらコミカルな感じがあり、宮崎駿のインスピレーションの一つかもしれないと思い印象に残っている。ちなみに同じ感じを期待して今村昌平監督の作品をその後何作か見たのだが、期待してたのと全然違っていた(別に嫌いではない)。そんな印象深い映画に原作があるとは知らなかったのでAmazonで偶然発見して思わず購入した。残念ながら電子書籍版は無いようだ。元々は作者の安本末子氏が小学生の時に書いていた日記を後年長男(にあんちゃんではない方のお兄さん)が出版社に持ち込んで書籍化されたものらしい。詳しい経緯は本書のまえがきに書いてあるが、出版にあたって編集された部分はあったとしても、一介の小学生4~5年生が書いていた日記が書籍化されるというのは尋常な事では無い。一体この日記の何が特別なのか?まず外形的なところを記述すると、日記は炭鉱町に住んでいた小学4年生の女の子、安本末子さんが書いている。彼女は数年前に母親を亡くし、父親もこの日記が始まる49日前に亡くしている(日記は父親の四十九日からはじまる)。家族構成は姉が一人と兄が二人の四人。長兄を除いた3人は学生で、一家を支えるのは炭鉱で働く長兄一人だが、正規雇いにはなれず、長時間働いても賃金は極めて低い。長兄が正規雇いに成れない理由は在日韓国人であるからと書かれている。一家は炭鉱町で貧困を絵にかいたような暮らしを送っている。彼らは後に借りていた家から退去せざるを得なくなり、一家離散の憂き目に会う。長兄は職を求めて遠くへ離れ、長女も住み込みの働き口を見つけて遠くへ行く。残された著者と「にあんちゃん」は、まるで「火垂るの墓」と同じように他家へ居候として預けられる。居候期間に書かれた日記に、突然文章がアルファベット表記になる部分があるのだが、そこを読むと胸がつぶれる。長兄と安本末子さんの生まれた年代も、年齢差も「火垂るの墓」の清太と節子に近い。同じような状況は無数にあったと思われる。日記を読んでいて書かれた年代について気になったので調べてみた。だいたい1953年頃のようだ。1953年というのはどういった時代だったのか?終戦から10年も経っていないのでまだ戦争の傷跡は残っていたように思われるが、日記の記述から戦争の痕跡を感じるところはほとんど無い。たしかに1953年と言えば小津安二郎東京物語が公開されているし、翌年には黒澤明の「七人の侍」も公開されているので、終戦後の混乱から抜け出し、復興の足取りがかなりしっかりとしてきた頃合いかとも思われる。日本映画で言うと正に黄金時代を迎えつつある時代だ。そういった時代背景の中で書かれた小学生の日記として資料的な価値は高いのだが、当然出版当時はそういった点で評価されていたわけではもちろんない。読み進めていくと、なぜこの日記が書籍化されたのかがわかってくる。とにかく文章力が異常というか、文体がほぼ大人なのである。日記に書かれている生活や感情は小学生なのだが、それを伝える文章構成がもう完全に大人のそれ。小学生の日記といえば先日「底辺Youtuber」ことピョコタンの夏休みの日記帳を読んだのだが、それと比べても筆力の桁が違う。ほんとうにもうレベチなのだ。ピョコタンの日記も当時自分が書いていた日記と比べると相当書けていると思ったのだが、安本末子さんのこの日記と比べると天と地の差がある。わたしはピョコタンのファンなので、べつにピョコタンをはずかしめたいわけではないのだが、数カ月のインターバルで別々の小学生の日記を読んでしまったのでどうしても比べざるを得ない。しかもピョコタンは6年生、安本末子さんは4年生なのである。それなのに天津飯フリーザくらいの差があるのだ。それにしてもこの違いが何に起因してるのだろう?たぶん安本末子さんの方が読者を強く意識しているということはあるかもしれない。また直接話法を多用するスタイルが臨場感が生み出している面は大きいかもしれない。読んでいて正直大人が手を貸したのでは?と疑問に思わないでもなかった。読み進めると、日記の中盤で謎が解けた。安本末子さんの文章力の素晴らしは長兄の教育の賜物だったのである。日記の中盤で長兄からの手紙が全文引用されているのだが、その手紙からいかに長兄が末子の文才を見抜き、それを伸ばすことに腐心していたかが読み取れる。安本末子さんの類まれな筆力も、長兄という天才的プロデューサーが居てのことだったのである。そもそもこの日記が出版されることになった経緯も長兄の手腕によるところが大きい。その後この天才的プロデューサーであった長兄、日記からはあまり存在感がうかがえない長女、タイトルにもなっている著者の憧れ「にあんちゃん」がどうなったのか?日記の続編は出版されていないので一読者には知る由もないけど、高度成長期の波に乗って幸せな人生をすごしていて欲しい。Wikipediaによるとその後の安本末子さんの詳細がある程度わかる。まだ存命でお元気にしてらっしゃるらしいのは何よりである。

 

Kindle】『会って、話すこと。――自分のことはしゃべらない。相手のことも聞き出さない。人生が変わるシンプルな会話術』田中 泰延

これはひどい。既存の会話術本でよく取り上げられる傾聴や自己開示といったテクニックに対する単なる逆張りをしているだけの内容。「自分のことはしゃべらない。相手のことも聞き出さない。」ボケにボケを重ねるテクニックを推奨しているのだが、提示される会話例がつまらないコントの台本以下のため全く説得力が無い。要するにテクニックより心が大事ということらしいのだが、その心も伝わってこないのでどうしようもない。著者には前著があるらしく、それが売れたので二匹目のどじょうを取りに来たんですね、という印象しか持てない本だった。

 

Kindle Unlimited】『DTMerのためのフィンガードラム入門 「指ドラム」のはじめ方と練習方法がわかるガイドブック』スペカン

★★★☆

MIDIコントローラーのAbleton Push 2を清水の舞台から飛び降りたつもりで買ってしまったので、フィンガードラムを学ばんと本書を手に取った。他にフィンガードラムに関する書籍は無いので、著者はフィンガードラムではパイオニア的存在と思われる。元々ドラマーだったとのことなので、リアルドラムの経験をフィンガードラムに持ち込んだという点も大きなポイントと思う。私が購入したAbleton Push 2は64パッドであり、本書も64パッドでのフィンガードラミングについての記述もあるがメインはあくまで16パッドだった。これはパッド付のMIDIコントローラーの主流が16パッドである現状から言ってやむを得ないことと思われる。ただ本書には64パッドでのフィンガードラムのレイアウト例も提示されているので、64パッド使用者にも収穫はある。私も本書のレイアウトを参考にAbleton LiveのDrum Rackでドラムの音をパッドに配置していった。軽くフィンガードラミングした感じでは違和感なく使えている。正直素人なのでこれがどの程度妥当なレイアウトなのかわからないのだが、他に類書が無いためこれが64パッドでのフィンガードラムのスタンダードレイアウトになるだろう。著者はSNSを積極的に活用しておりYoutubeでもTikTokでもフィンガードラムのトレーニング動画やデモ演奏が見れる。テキストではわからないリズムも動画を見れば一目瞭然。本書は動画とセットで学習できるように動画のQRコード随時添付されている。本書の利点はリアルドラマーの視点からの教則本となっていることのように思われる。リアルドラムの経験をフィンガードラムに応用したということは、逆も可能なのではないかと期待できる。個人的に電子ドラムも叩いているので、基本的なパターンやドラムフィルが採録されているのはうれしい。せっかくAbleton Push 2を買ってしまったのでフィンガードラムを練習したいと思う。

 

振り返り

1月から2月にかけて他の用事で忙しく、読んだ本のコメントもあまり見直すことができなかった。駄本を読むとダメなところを指摘するコメントをしっかり書きたいと思うんだが、その時間もなかったのが残念。収支もトントンだったし反省するところの多い新年だった。

2021年10月~12月期 読了書籍 殿堂入り4冊(Out of 32冊)

2021年10月~12月に読了した32冊の中から、星5を付けた本をまとめてみた。この4冊はいずれ再読し、キチンとレビューしたい。

 

【文庫】サイゼリヤ おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ』正垣泰彦

★★★★★

なぜ買ったのか忘れてしまった。帯に「ネットで話題沸騰!」とあるので、話題沸騰した時にポチったと思われる。一言で言うと名著。創業から一定の成功をおさめるまでの苦労エピソード、経営哲学、日々注視している指標などメモりたくなる箇所が盛り沢山。創業者自ら語っているというポイントも高い。飲食業で長く戦い、しかも勝ちをおさめてきた人物が語る言葉は重みがある。

 

Kindle】『空気を読まずに0.1秒で好かれる方法。』柳沼 佐千子

★★★★★

他人にいかに好印象を与えるかというテーマで、ここまでの実践性を備えた本はないのではないか?と思わせるほどすごい本。プロローグから、何もしていないのに他人からことごとく嫌われてしまうという自己開示があり、そこからいかに他人に好かれるための努力を積み重ねて来たのかが語られる。その努力の末に掴んだ気づきがタイトルにつながる『空気を読まずに0.1秒で好かれる方法』というわけだ。この空気を読まずに0.1秒で好かれる方法というのが滅茶苦茶具体的かつ実践的なため自分にもできそう、と思わせる力がすごい。ただこれを実生活で実践するのは自分自身の照れや、突然ふるまい方が変わったことにたいする周囲の違和感という高いハードルがある。本書はそこにも抜かりなく対応しており、著者自身が感じた抵抗感とそれをいかに乗り越えたのかのエピソードが的確に用意されている。巻末のケーススタディの量と具体性も素晴らしい。営業職など相手の好意をどうしても勝ち取らなければならない業種の人や差し迫った必要にかられている人は本書を買って、後は実践あるのみではないだろうか。

 

【単行本】『ひと月9000円の快適食生活』魚柄仁之助

★★★★★

極東ブログの書評で読んだか、単に料理についての本をAmazon検索していて見つけたかのどちらかだと思うが、そんなようなきっかけで購入した記憶。ただ「極東ブログ ひと月9000円の快適食生活」で検索しても該当の書評が出てこないので別の誰かか、単にAmazon レビューの影響かもしれない。レシピ本はそんなに買う気しないけど、料理にまつわる風習やウンチクなどが語られている本は好きで評価が良いとつい買ってしまうという私の習性もある。内容的には一つの食材や日常的に料理する人の生活の知恵などについての短めのコラムが229編も収録された事典的なもの。ちゃんと巻末に索引もついている。ただコラムの文体は全くお堅いところは無く、正に「軽妙な語り口」という感じの口調で、実に手際よく軽くつくれそうな料理やサクッと真似できそうなテクニックが紹介されている。貰い物や安価に入手できたがそのままでは食べ辛い or 廃棄せざるを得ない食材を上手にリサイクルというか、別の食材と合わせておいしくいただくという趣旨のコラムが多い気がした。そのため敢えてその食材を入手してレシピを試してみようという気にはあまりなれない感じ。ただウンチクを読んでいるだけで楽しいし、料理スキルがあると生活が楽しくなるというのがわかる。1997年刊行でもうすぐ25年になるが、内容的にさほど古さを感じないのはデフレで物価がそこまで変わっていないというのもあるだろうけど、エコロジーや節約といった著者の視点が現代でも十二分に通用するのと、現代社会の問題点が1997年時点でだいたいは出揃っていたというのもあるなぁという感想を抱いた。また折を見て読み直したい本である。ただ、もし本書の21世紀版があれば読みたいなぁ、とも思う。どのようにアップデートされているのか、はたまた変わらないのか。まああんまり変わらない気はする。

 

Kindle】『White Fang』Jack London

★★★★★★

ジャック・ロンドンは「The People of the Abyss(どん底のひとびと)」を読もうと思って機会を伺っているのだけど、試しに読んでみた短編集の一発目に収録されていた「Human Drift」がクソ小難しい上に退屈極まりなかった。やばい作家なのかと心配になり著作のアマゾンレビューを読んでたら、本書の評判がかなり良かったので勢いで購入。私は動物モノ好きなので動物モノで評価が良いとすぐポチる癖がある。しかしこれが大正解。もう冒頭の追跡シーンから手に汗握る。二人の男が犬ぞりで雪原の荒野を走っている。男たちを追いかけるのはオオカミの群れ。夜ごとのキャンプで犬ぞりの犬が一匹、また一匹と姿を消す。弾薬は尽きかけているが、まだ町までは遠い。やがて…という導入部のスリルとサスペンスがとにかく最高。タイトルとなるホワイトファングが登場するのはかなり後だし、導入部と本編は物語的な関連性はかなり薄めなのだが、この小説はとにかくつかみが最高だった。これは本当にお手本にしたい。タイトルのホワイトファングが登場してからは名犬一代記みたいなお話になるのだが、それも楽しいし、実際楽しんで読んだ。ただ冒頭の追跡シーンのこれからどうなっちゃうんだろう感はさすがにもう無かったなぁ。

2021年12月に買った本(10)・読んだ本(11)↓1冊減量

2021年12月に買った本(10)

今月の購入冊数はトータル10冊。リアル3冊、電子7冊の内訳。今月は少な目に抑えようと思っていたので、5~6冊ほど買うのを我慢した。ポーカー本も日英で一冊ずつ目星はつけたんだが、もう少しリアルでの試行錯誤を積み上げた方が理解が深まるだろうし、しばらくは購入を見送る方針。あとは風水と大航海時代に対する興味が湧いたので、いくつか物色したものの、風水関係の本を一冊だけ購入するにとどめた。風水本は前にも購入したものがあるので、それを先に読むべき、と言い聞かせた。大航海時代関係も何か買っている気がするのでそれをまず読もう、ということである。それで気が晴れるかもしれないし。欲しくなった時に、昔買った本に類書が無いか考えると少し欲望が抑えられる気がする。ピョコタン絡みでピョコタンの漫画が載っているゲームラボの新刊も買いたくなったが、雑誌なのでわりと簡単に欲望が抑えられた。自分の中で「単行本>雑誌」の序列があるかもしれない。そういえば雑誌は何か興味のあるテーマの特集号とかで無い限り買ったことない。とは言え1980年代のログインとか、なんの変哲もない号を紹介したYoutubeを見たりしているので風俗資料的価値が出ると俄然興味がわくタイプ。こういうのスノッブって言うんでしたっけ?まぁ1980年代のログインなんか何千円もするから買わんけど。

 

Kindle 】『樹木たちの知られざる生活 森林管理官が聴いた森の声』ペーター ヴォールレーベン, 長谷川 圭

口コミで購入。先月読んだ「ワンダーガーデン」でドイツの黒い森に興味を感じていたのでタイミング良かった。黒い森の話が出てくるかは不明なのだがドイツ人の著者で森林の話なら黒い森が出てこないなんてことはないはず。

 

Kindle Unlimited】『なんとかする 子どもの貧困』湯浅誠

「シングルマザーの貧困」の関連書に出て来たのでダウンロード。レビューも高評価。シングルマザー関連書籍は他にも沢山あるが、Amazonレビューがそうよくないので読むのを躊躇する。別にお金持ちではないので貧困問題は完全に他人事というわけではないけど、「シングルマザー」とか「こども」の、となると独身中年男性の自分とは別カテゴリの話になるのでこういう本で情報を摂取するしか縁が無い話題なのである。根っこが興味本位であることは否定しない。

 

【図録】『庵野秀明展』国立新美術館

ピョコタンチャンネルの交流会でおススメされてたので購入。最近ピョコタン絡みで何か買うことが多いかもしれない。とは言えそもそも庵野秀明ファンだったていうのもある。ファンになったのはTV版エヴァンゲリオンの最終回以来なので、かれこれ26年か。そんなわたしも近年はすっかり熱が醒め、シン・エヴァンゲリオンすら見ていないんだけど、同好の士に熱く勧められると再燃する思いもある。シンエヴァ見ようかなぁ。

 

Kindle】『星のさいごメシ1~3』おおひなたごう

ピョコタンチャンネルのおおひなたごうとの対談動画を見て購入。おおひなたごうテレビブロス時代に読んでて好きだったけど、ピョコタン絡みは財布の紐がゆるいこと限りない。

 

【文庫】『ものぐさ精神分析岸田秀

高校生の時に読んでドハマりして著作を読み漁ったんだけどすっかり忘れてたところ、何故かここ最近何度か名前が出たり、内容を聞かれたりする機会があった。しかし何しろすっかり内容を忘れていたので何の具体的な説明も出来なかったのでくやしくて購入。アマゾン検索するとKindle版もあったけどクソ高かったので文庫版を注文した。Kindle版の出版社が聞きなれないところだったけど、どういう事情かな?

 

Kindle】『システムトレード 基本と原則』ブレント・ペンフォールド

スキャルピングってカッコいいよね、と時々思い出したように憧れるんだけど、日本の株式市場が開いてる時間は働いているのでデイトレは諦めてた(24/7のFXは怖い)。しかし最近テスタの切り抜き動画を見るようになり、その憧れが亢進してきた上に、何やら日経225先物とかなら夜間でもデイトレ(ナイトレ?)できるらしい。で、投資について最近またぞろ調べはじめた。結果、日経225先物は退場者が続出のかなりヤバイ市場らしいのでおいそれとは手が出せないということがわかったのだけど、例えば米国市場が夏季は日本時間の22時30分から開くので、寄り付きから2時間くらいはちょっと夜更かしすればデイトレできなくもないのでは?と考えた。米国市場は日本と違って1株単位でも取引できるので大きな資金も必要ない。で、やっている人が居ないか検索したら、米国在住者のブログを発見。

nonbiri-kurasu.com

こちらで紹介されていたのが本書。これでコツコツドカンと大きく負けなくなったとのことなので、トレーダーの心構えとして読むと良さそうと思った。原書では続編が2020年に出版されてるので読了後は続編も買うかもしれない。

 

Kindle】『勝ってる投資家はみんな知っているチャート分析』福島理

テスタの切り抜き動画でおすすめされていた。投資を始める前に読むと良いとのこと。テクニカル系の解説本と思われる。

 

【単行本】『日本思想体系 古代中世芸術論』林家辰三郎

ふと平安時代の風水学に興味が湧き、当時の人がどのような典拠に基づいて風水を学んでいたのか検索してみた。何か易経みたいな中国の古の風水書のようなものがあるのかと思っていて、それが読みたいと思って検索したのだが、どうもそういうわけでもないらしい。Wikipediaの関連記事では風水に基づいて作られたといわれる平安京が引き合いに出されているのだが、それも諸説あるというか、逆に平安京のデザインから当時の風水的思考を読み取ろうとして諸説咲き乱れるカオスな状況のようだ。Wikipediaの関連記事で触れられている「山川道澤」とか最初は人名かと思ったよ。こうなったら何か風水学の歴史を解説した本を読みたいのだが、手ごろな本が見当たらなかったので、Wikipediaにも出ていた「作庭記」(これはどうやら平安時代の風水学の典拠の一つと目されているらしい)が収録されている本書を購入してみた。格安だったし。岩波書店のオンデマンド出版でも買えるらしいけど目の玉が飛び出る値付けだった。オンデマンド出来るなら電子書籍化してほしい。

 

2021年12月に読んだ本(11)

今月は11冊読了。購入冊数が10冊なので、かろうじて1冊の減量に成功。やはり月10冊程度が限界かなぁ。月末に近づくと読了可能数が見えてくるので、本の新規購入に対する心理的ブレーキが効きやすくなる。これは来月にしとこう、みたいな。これはまさにレコーディングダイエット。

 

Kindle】『ひとりずもう』さくらももこ

★★★★☆

お笑い芸人の誰かの座右の書になっているのをどこかで知って購入した気がする。名前が思い出せないので別にそのお笑い芸人のファンとかではなかったと思うんだけど、誰かにそう思わせる本って読みたくなる。さくらももこのエッセイを読むのは多分「うみのさかな&宝船蓬莱の幕の内弁当」以来かもしれない。「うみのさかな&宝船蓬莱の幕の内弁当」はAmazonレビューを読むと内容がヒドイとか、今なら炎上必至とか書かれているけど、当時は笑い転げて読んだ印象しかないんだなぁ。内容は全く覚えていないけど相当悪ノリしてたというイメージだけは脳に刻まれている。あまりに面白くて友達に借りて読んだのに後日自分でも買ったくらいだ。著者の一人がさくらももこと知ったのも結構後になってからで、正直さくらももこを見直した記憶すらある。うみのさかなってさくらももこだったのかよ!!みたいな。それはさて置き、本書はさくらももこの学生時代から漫画家デビューするまでのあれやこれやを時系列で並べた連作エッセイ集。小学生時代からの思い出が場面ごとに切り取ったように配置されているので、まるで物語を読んでいるような感覚もあった。前半は女学生のバカ話的でさほど面白くないのだが、キャラクターが徐々に肉付けされ、主人公が置かれている状況も次第に伝わって来て、後半の漫画家になる夢に挫折しかかる話からは、それまでの積み重ねがあり思いのほか感情移入しているため一気呵成に読み進められた。前半のいつもの感じのエッセイが良いビルドアップになっているのが、意図してかわからないけど巧い構成と思った。色々あったけど最終的に夢を叶えた、という話なので、誰かの座右の書になっていて全然おかしくない。結局自分に出来る事でハマる場所を見つけろ、ということかなぁ。

 

Kindle】『Fear and Loathing in Las Vegus』Hunter. S. Thompson

★★★

たぶんジョニー・デップベニチオ・デル・トロの映画を見て原作を買ったと思うんだけど映画を見た記憶がスッポリ無い。まあ20年以上前の映画だしなぁ。お話の内容はレースの取材にかこつけて語り手の記者がクスリをキメながら自称弁護士のサモア人と数百ドル分の薬物をキャデラックに積んでラスベガスへ行く珍道中的なもの。この本、最初の方は何度も読んだ記憶がある。冒頭部の語り手の記者とパートナーの弁護士のでたらめ振りが非常に良い塩梅なのだ。ただこれまでは最初にホテルに到着したあたりで飽きて放り出していた。今回初めて全編読み通して、話の展開がほとんど未知だったので、新鮮な気持ちで読めた。たぶん映画は見てても途中までな気がする。トレイラーを見るとクリスティーナ・リッチが出ており、クリスティーナ・リッチはたしかに見たような記憶があるので途中まで見たんだろうか?なんかホテルの部屋を足首が水に浸かるくらい水浸しにしていたシーンがあったような気がするんだけど、原作にはそういうシーンが無いのだ。個人的に一番楽しめたのは途中でラスベガスを離脱しようとした記者が、速度違反で警察につかまるくだり。警官に追跡されている時に、こういう時のイケてる対処法みたいなことを車を停めるまで長々と自慢げに独白しながら、いざ停車して警官と対面という時に片手にビールの缶を握りしめていることに気付いて、それまでに考えていた申し開きの全てがご破算になる、ていうところ。これはおかしくてニヤニヤした。1972年の話なので空港の描写など今では考えられないくらいおおらか。色々な描写がありえなくて時代の移り変わりを感じることができる。本書の面白さは、基本的に薬物で頭のタガが外れた人が無軌道な振る舞いをして、善意の第三者が引いているのを見て楽しむという感じなので、それが楽しめる人には笑えるところが多いのではなかろうか。もともとはカウンターカルチャーの末路みたいな意味合いがあるみたいなのだが、そのあたりに疎いので風刺なのかはよくわからん。

 

Kindle Unlimited】『シングルマザーの貧困』水無田気流

★★★

興味本位で読み始めたため統計資料や海外との比較、福祉制度の問題点の考察などの記述は目が滑りまくった。興味を持って読めたのは各章の冒頭にある具体的なシングルマザーのエピソードだけ。本書で取材されているシングルマザーのエピソードの中でも特に印象的だったのは、最後の章で紹介されていたシングルマザー。この人は自力でお金を稼ぐ力があり、かなり裕福に暮らしているのだが、そんな女性が離婚に至った経緯がなかなか衝撃的だった。彼女は男性的な規範にとらわれないところに惹かれて派遣社員下方婚をしたのだが、子供が生まれてそれまで惹かれていた夫のゆるキャラ的特徴が逆に父親としての物足りなさに感じられてしまう。最終的に子供の成長に悪影響と見なして離婚してしまうのが、これは男性側はどうすることもできずに辛いだろうなと思っった。この件に限らず女性が離婚に至る決断にはこどもに悪影響があるかどうかが大きくかかわっていて、それまでのシングルマザーの例では男性側に少なからぬ落ち度があったのだが、最後のケースは男性の落ち度ではないだけに逆に人生を感じた。誰も悪くなくてもうまいこと行かないことがある。それが人生、という感じ。個人的に読みたいのはこういうエピソードだけを集めた本だけど、なかなかそういったものは無いね。

 

【単行本】『ウンベルト・エーコの小説講座 若き作家の告白』ウンベルト・エーコ

★★★

ウンベルト・エーコは昔熱心に海外小説を読んでいたころにハマった。『薔薇の名前』『フーコーの振り子』『前日島』と読んで『前日島』の面白さでウンベルト・エーコ大好き~という感じになった記憶。『薔薇の名前』は映画もあったし、ミステリ仕立てで比較的わかりやすかったんだったけど『フーコーの振り子』は正直ようわからんかったような気がする。それなのにあの分厚いの良く読んだなぁ。若かったなぁ。とは言え、そもそもその後小説をあまり読まなくなったので疎遠になり『前日島』以降の著作があったのも本書を読んで初めて知った。検索すると『前日島』の次作『バウドリーノ』が翻訳されたのが7年後なのでそこまで待てなかったのも無理ないか。本書は村上春樹の創作論的な本のAmazonレビューを読んでいてサジェストで類書にあげられていたのに興味を引かれて購入した気がする。懐かしさもあって購入したのだが、なかなか理解の難しいところも多かった。元々はアメリカの大学で行った招待講義で、それをまとめたのが本書ということらしい。一番わかりやすかったのは最初の章「左から右へと書く」で、ちょっと読むだけのつもりがするすると読めて思わぬ夜更かししてしまった。ウンベルト・エーコの創作手法について最も直截に触れられているのもこの章で、『薔薇の名前』や『前日島』をどのように構想したのか具体的に述べられている。ウンベルト・エーコは作家デビューが遅かったのもあってか、36年のキャリアで6作しか小説を残していないんだけど、『薔薇の名前』を書く時に登場人物すべての肖像画を作成したとか、『フーコーの振り子』を書く時に深夜パリの街を録音機片手になんども歩いて視界に映るものを全て吹き込んだとか、尋常でない努力というか道楽?をしたことを告白している。それは時間かかりますよね、と言うしかない。わたしもシナリオを作る時は当時の新聞を調べたりすることはあるけど、舞台にする場所をそこまで精緻にリサーチする時間もお金も無いので、楽しそうでうらやましさと親近感を勝手に感じた。2章以降は「シニフィアン」「シニフィエ」「テクスト」とかよくわからん言葉が頻出して急速に理解度と親近感が落ちた。もう興味のないことを理解する努力の振りすらもしたくない年頃なのかもしれない。3章はシャーロック・ホームズとか作品世界を離れても成立するようになったフィクションキャラクターについての蘊蓄(ウンベルト・エーコアンナ・カレーニナをよく例に出していたけど、あの本そんなに有名か?世代間ギャップを感じた)。4章は列挙型の表現手法についての偏愛がタラタラと述べられている。ここはわからんでもなかった。それにしてもウンベルト・エーコは好きなんだけど何言っているのかわからんことが多すぎる。話し方とかクソオタクだったらなおさら好きだなぁ。

 

Kindle】『星のさいごメシ1~3』おおひなたごう

★★★☆

おおひなたごうテレビブロスの連載を昔読んでた。その頃はかなり楽しんで読んでいた記憶はあるんだけど、単行本で読んだ記憶が無いのでひょっとしたら本を買うのは初めてかも。アマゾンで著作ページを眺めると「俺に血まなこ」というタイトルが脳にヒットした。テレビブロスで連載していたのはこれっぽい。なんかぼやーっと当時の絵が浮かびそうで浮かばない。1994~1995年くらいか。その後おおひなたごうがチャンピオンに行ったのはどこかでへーっと思った気がするからうっすら記憶にあるけど、1999年頃にインターネットを始めてからは少年誌というか雑誌自体ほとんど読まなくなってしまったし、テレビも見なくなっていたので当然テレビブロスも読まなくなっていた。観測範囲から外れてしまったのですっかり疎遠になってしまっていたというわけだ。そこで不意のピョコタンチャンネルでの対談である。おおひなたごうがまた私の観測範囲に戻って来た。以前からチラホラ名前が出ていたので、そういえばおおひなたごうって今何してるんだろう?なんて思ったりはしたけど、動画で見るとインパクト大だなぁ。顔自体初めて見るので、疎遠になっていた友人と再会というのとは少し違うんだけど、それに近い懐かしさを感じた。それにしてもギャグマンガからグルメ漫画の領域に手を伸ばしていたとは知らなんだ。内容は面白い。死ぬ前に食べたい物って何?というテーマだから毎回鉄板の見どころが作れるのは強い。これはアイデアの勝利。ただ各話に登場する「最後めし」は外食がメインだったけど、個人的にはお店を紹介されても、そのお店がいつまであるかわからんし、遠くならそんなに行く気しないので、手料理オンリーにした方が再読性が高くなったのではないかと思った。ピョコタンチャンネルの対談動画では、ピョコタンから内容に関係ないギャグが邪魔になって一般層を遠ざけているのでは?という意見がでていた。それも非常によくわかるが、逆にこの無意味なギャグが無くなるとこのお話を漫画でやる意味が無くなってしまうような気もした。個人的にカメラマンの中川絡みのギャグがツボにハマって笑えたし、わたしはこの方向を推し進めてほしいと思う。グルメ漫画だけでなく、取材に基づいた学習漫画みたいな展開もありかもしれない。巻末のアシスタント陣によるおまけマンガも思いのほか面白かった。個人的に一番好きなのは1巻のカワタニダイチのおまけマンガ。これはなんか絵が好き。馴染めるというか、一コマ一コマに絵の魅力がある。特におおひなたごうキャラの髪型がコマで不安定なのがかわいいんだなぁ。

 

【単行本】『勉強大全 ひとりひとりにフィットする1からの勉強法』伊沢拓司

★★★

何年か前のカドカワ株主優待でゲット。学習法に興味があるので「勉強大全」というタイトルに惹かれて選択した。やっと読み始めたのだが、巻頭から著者の軽い写真集が付いていたので何?と思う。なぜ「勉強大全」というタイトルの本が著者の写真集から始まるのかな?帯を改めて見ると謎が解けた。「東大卒クイズ王」。なるほど有名人らしい。それはそれで実績だし信頼性も上がるので素晴らしい。「東大卒クイズ王」ということだけど本書では「東大卒」によりフォーカスしており、紹介される勉強法の対象は主に受験だった。(クイズの勉強法にも若干触れてあり、知識はあるが早押しが苦手で勝てなかった著者が勝つためにした工夫などなるほどと思えるものがあるので個人的にはこちらにフォーカスしたものを読みたいと思った。)想定読者層は大学受験をひかえた高校生と思われる。たぶん企画会議とかで番組視聴率から受験生の数を推定して、ここを狙っていきましょうよ、みたいな感じのプレゼンがあったのだろう。そういうことで巻頭のミニ写真集なのだろう。ファンの高校生にどれだけ刺さってるのかよくわからんけど、あるいは出版社にキャラクターを売る商法みたいなのがあり、これはこれから著者のキャラクターを売り込んでいく戦略の第一歩なのかもしれない。あんまりキャラクターで売られている著者の本を読まないのでわからんけど、DaiGoの本とかもミニ写真集が付いてそうだもんな。まあどういう意図にせよ本の作りが著者のファンで受験生というピンポイントなので、それ以外の読者はなかなか読みづらいかもしれない。私はファンでもなければ受験生でもないので、自分のような部外者にも何か得るものがあるか?という視線で本書を読んだ。しかし書籍の想定読者層からズレてしまうと、どうしても斜めに読んでしまうんだなぁ。若干辛口の評価になってしまうかもしれない。結論から言うと、受験生でない人が読んで得られるものは決して多くない。まず「大全」というと網羅的な内容を想定するがそういったものでは全く無いのである。内容的には自分の欠点に即した勉強法を見つけるための心構えを紹介したようなものなので、具体的な勉強法を期待して読むと肩透かしを食らうだろう。「勉強大全」より「東大卒クイズ王が教える勉強の極意」みたいなどストレートなタイトルの方が良かったのではないだろうか。それはそれで一読の価値があるし、クイズ王という超特殊なスキルから普遍に通じる勉強法を提示するという切り口も面白い気がする。ではこの本に何か得るものが無いかというと、そうではない。ただ、本書からどれくらいお持ち帰りできるかは読者側の咀嚼力にだいぶ左右されそうだ。個人的なところで言うと「一日一点主義」という考え方がかなり参考になった。私は受験生ではないのでテストを受ける機会はないけど、今している勉強が結果を出す現場において少しでも好影響を与えているのか?漫然とルーティンで勉強していないか?常に現在の勉強法を評価して見直す姿勢というのは非常に大切なポイントで、テストのない分野の勉強をしている時にこそ重要になる考え方と思う。著者はまだ若く、能力的にも非常に高いものがあると思うので、ぜひ芸事や実学など様々な分野にもチャレンジして、そちらで勉強法についての知見を更に深め、新たな「勉強大全」を著してほしいところである。

 

Kindle】『My Voice Will Go with You: The Teaching Tales of Milton H. Erickson』Sidney Rosen

★★★☆

購入したのはくたびれはてこのブログで紹介されてたのがきっかけだったと思うんだが、検索してみたらブログが非公開にされていたので間違いかも。たしか離婚を決めた夫婦の夫の方ににエリクソンがしたアドバイスについてのエピソードが紹介されていたと思う。これは本書のキラーエピソードと思われるので、ここで再度紹介してみる。この夫婦はともに聖職者の家庭に育ち、どちらも非常にお堅い教育を受けて来た。そのせいか、初夜の営みがとてもぎこちなく、子供こそ出来たものの何のよろこびも無いものだったと言う。結局この夫婦は話し合いにより「友好的な離婚」をすることを選ぶ。エリクソンは夫の話を聞いて、それはたしかに不幸な結婚であるので「友好的な離婚」をするための手順を医学的アドバイスとして行うことを提案する。具体的な手順とはこうである。まずホテルを予約して個室のダイニングルームと部屋を借りる。次に看護師を雇い、赤ん坊を預ける。妻に「友好的な離婚」をするために必要なことと説明し、彼女を予約したホテルへ連れ出す。お金はいくらかかっても良いから、個室のダイニングルームで素晴らしいディナーを、キャンドルの明かりでとること。そしてこれは特に医学的処方として伝えるのだが、シャンペンを一本頼み、必ず二人で飲むこと。食事を終えたら―遅くても22時前に終えること―フロントへ行き予約した部屋の鍵を受け取る。ベルボーイがフロアへ案内してくれたら5ドル札のチップを渡し、「Scram」と言うこと。ベルボーイはあなたの言うことを理解するだろうから、それから部屋へ行きなさい。ドアの鍵を開け、妻を両手に抱きかかえてからドアの敷居をまたぐ。彼女を両手に抱えたままドアの鍵をかけて、ベッドのそばまで歩き、そこでおろしなさい。それから彼女に、「最後にさよならのキスを」と言い優しくキスをし、そして「今のは君のためだったから、もう一度だけ、今度は私のために」と言う。彼女の膝に手を落としたら、キスを少しだけ長引かせなさい。膝の手を撫でおろし、彼女のスリッパを脱がしなさい。それから彼女に、「二人のためにもう一度だけキスを」と言い、彼女の服の下に手を入れて撫でおろし、それからもう片方のスリッパを脱がしなさい。その後の動きはシャンペンと二人の内分泌の働きにより自然と決まるでしょう。ストッキングを脱がせて、キスをしなさい。夫はこのアドバイスを忠実に実行したと思われるが、結果どうなったかは本書を読んでたしかめてほしい。私が知りたいと思ったのは、どのようにしてCrippleだったミルトン・エリクソンがこれほど巧みに女性を誘惑する術を身に付けたのかということだ。不幸にして自伝を書かずに他界されたので、本人の証言はもう得られないが、そちら方面に詳しい評伝があれば読みたい。本書はこういったエピソードが山のようにあるのだが、中にはそんなにうまく行くもんですかね?と疑問に感じるものも当然多数ある。アネクドートはどうしても語られる過程でニュアンスが抜け落ちて定型化してしまうものかもしれないのだけど、本書で紹介されているエピソードも、一体どこまで事実なのか、今となってはわからない。ミルトン・エリクソンの伝説的業績を信じる人にはかけがえのない名著だろうし、そうでもない人にはそれなりの本と言える。さして難しい英語で書かれているわけでもないので英語に抵抗が無いひとは原書で読むのがおすすめである。何より翻訳に比べて一回り安い。

 

Kindle】『樹木たちの知られざる生活 森林管理官が聴いた森の声』ペーター ヴォールレーベン, 長谷川 圭

★★★☆

ドイツでフリーランスの森林管理官を務める著者による、樹木の生態についての啓蒙書。『樹木たちの知らぜざる生活』というタイトル通り、あまり一般的ではない樹木たちの生態を詳細に語っている。個人的にはドイツの黒い森に興味があったので、具体的な森の成り立ちやそこでのエコシステム、人々の関わりなどが知りたかったのだが、そいういうエピソードは少なく、ブナやトウヒといった樹木の生態について、それらがどのように環境に適応して生きているのかについてが主だった内容だった。樹木間のネットワークや情報伝達手段についても書かれているのだが、いちいちエビデンスを提示して説得力を持って語るというスタイルではないため、それってあなたの妄想ですよね?、というツッコミに対する対処が出来ていないようのが気になった。しかし、こちらに樹木に対する科学的な知見にたいする知識もなく、著者の記述がどこまで妥当なのか、どこからオカルトの領域に踏み込んでいるのか判断がつかないため、常に留保付きで読むことになった。ただ樹木に対して驚くほど無知であることだけは自覚できたので、より科学的な証拠に基づいた説得的な啓蒙書か、あるいはまるで反対の、森のきこりが感覚と経験則だけで樹木の生態について語りました、みたいな本が読みたいなぁと思った。とは言え樹木に対する見方を一変させる世界観を提示している本ではあるので、一読の価値はある。

 

Kindle】『督促OL 修行日記 (文春文庫) 』榎本まみ

★★★★

職業物が好きなので買った。借金の督促というあまり知られていない世界なのも良い。前半はおそらく意図的にスカスカに書かれていると思うのだが、それでもブラック業務の描写がきつい。いや業務そのものというより、朝から終電間際まで働いて、ロクに回復もできず翌朝出勤し、彼氏とも別れ、さして成果も残せず、感謝もされず、しかし他に選択肢がないのでブラックな業務に邁進せざるを得ないという闇を見るのがきつい感じ。また著者は仕事をネタにした4コマ漫画を描いており、その中で自身をうぶな新人OL的なキャラクター化をして描いているので、語りの文体も素の体験談というより「うぶな新人OL」というキャラクターを通した「エンターテイメント」な体験談になっているのが個人的に読みづらかった。本書も半ばを過ぎると、何もできなかった著者が徐々に技を身に付け、ブラック極まりない業務に対応できるようになってくる。そのあたりから読みやすくなり、また著者の素顔も見えてきてページをスワイプする手も捗るようになった。論理学の本をヒントに行動を変えたり、20万円支払ってビジネスセミナーに参加したり、OB・OGの推理小説研究会のパーティに参加して、自分だけ成果を残せていないことにみじめな思いを味わったり、「うぶな新人OL」というキャラクターから少しはみ出すような描写が個人的にはリアルで面白かった。本書の白眉は最終章である。内容的にはそれまでのまとめなのだが、前半のスカスカ感がなく、しっかりとした密度で借金の督促という業務について、また著者がその困難にどのように立ち向かったのかが振り返られている。個人的には前半の業務の描写から伺える闇が深く、よくこんな仕事を続けられたなと思ったのだが、その闇の中でのともし火のようなエピソードも付け加えられていて、そういう職場での心遣いがあったから著者も仕事を続けられたのだなぁとホロリと来た。それにしても、コロナ禍でコールセンター業務も在宅勤務に移行したと聞いたのだが、その後状況は改善したのか、悪化したのか、現況が気になるところである。

 

 

 

 

 

2021年11月に買った本(16)・読んだ本(11)↑5冊増量

2021年11月に買った本(16)

 

Kindle】『ほんとうのアフガニスタン中村哲

はてなブックマークの記事でおすすめされているのを見て購入。中村哲氏の記事は過去に何度か読んだことがあったし、訃報の記事も読んでいたけど、ここで紹介されているような何でもやる「問題解決能力」の高い人というイメージは無かったので俄然興味を感じた。こういう泥臭いことをいとわない実行力の高い人は好きだ。憧れる。

blog.tinect.jp

 

Kindle】『生きのびるための流域思考』 岸由二

Kindle】『首都水没』 土屋信行 

水辺の街を舞台にTRPGのシナリオを書いているのだが、仕掛けの一つとして出したい水門や暗渠など河川工事について基本的な知識が足りないためリアリティのある描写ができない。全般的な教養を高めるために購入。

 

【ソフトカバー】『謎検 日本謎解き能力検定 過去問題&練習問題集 2017』

ピョコタンチャンネルの交流会で紹介されていたので購入。Kindle版もあったけど、レビューにKindle版では解けない問題があると書かれていたので単行本版を入手。

 

Kindle】『池波正太郎鬼平料理帳』佐藤 隆介

池波正太郎の料理描写は好きだし、過去に著者のグルメについてのエッセイ本も買っているのでAmazon検索していてたまたま目に付いた本書を購入。ちょうどいま魚柄仁之助の「ひと月9000円の快適食生活」を読んでいるので、また料理本熱が高まったというのもある。レシピには興味がないのだけど、料理にまつわる文化を感じられる本は好きで面白そうなものはつい買ってしまう。

 

【文庫】『ムツゴロウの放浪記』畑正憲

【文庫】『ムツゴロウの青春記』畑正憲

【文庫】『ムツゴロウの大悦声』畑正憲

はてなブックマークでムツゴロウさんのインタビュー記事がバズっていたので、そういえばすごい破天荒エピソードの持ち主だったなぁと思いアマゾンで著作を検索したところ、ほとんど電子化されていない様子。その中で評判の良いものを購入してみた。

bunshun.jp

 

【単行本】『銭の花 上』花登 筐

【単行本】『銭の花 中』花登 筐

【単行本】『銭の花 下 1』花登 筐

【単行本】『銭の花 下 2』花登 筐

【単行本】『銭の花 下 3』花登 筐

【単行本】『銭の花 下 4』花登 筐

ドラマ「細うで繁盛記」の原作。

ja.wikipedia.org

女性が女手ひとつで商売で成功すると「細腕繁盛記」と形容されたりすることがあるが、その起源になったドラマと思われる。「細腕繁盛記」という表現がそれ以前からあったのかよくわからんけど、少なくとも人口に膾炙するようになったきっかけの作品であることは間違いない。ドラマは未見だが同原作者の『どてらい男』がどえらく面白かったので、女版どてらい男のようでもある『銭の花』に興味深々であった。電子化されたら絶対買おうと思っていたんだけどいつまでたっても電子化される気配が無いのでタイミングで古書を購入してしまった。全六冊。また積読山脈がプラス成長してしまう。それにしても上・中・下1・下2・下3・下4ていう巻数カウントは控えめに言っても異常。どういう事情?

 

【単行本】『シナリオの技術』新井一

「シナリオセンター」で検索したら「意味ない」が検索候補にあがったのでそれで検索するとトップに表示されたのがこのページ。面白い。毎回課題提出する人少ないんだなぁ。もったいない。それは確かに意味ないわ。

kotatsumegane.blogspot.com

そこでおすすめされていたので購入。残念ながら電子書籍版は無し。

 

Kindle】『Lassie Come Home』

Jack LondonのWhite Fangを読んでいて、動物モノの良さを再確認した。読んでいるとコリー犬が出て来たので、こどもの頃に一瞬だけ見てドハマりした名犬ラッシーを思い出した(ちゃんと見たことは無い)。調べると原作があるらしい。Kindle版が安かったのでポチる。コリーめちゃめちゃ飼いたかったなぁ。

 

2021年11月に読んだ本(11)

今月は買いすぎた。積読山脈が5冊もプラス成長。読破数を稼ぐために漫画を多めに読んだけど追いつかず。「銭の花」6冊が無ければギリ積読山脈のマイナス成長を継続出来てたんだが仕方ない。こういう月もある。現在の生活では無理しても月10冊くらいが読破量の限界らしい。これ以上読むには何かを犠牲にしないといけないし、もう買うのを我慢するしかなさそうだ。

 

Kindle】『ぼくは任天堂信者2』ピョコタン

★★★☆

Kindle】『ぼくは任天堂信者3』ピョコタン

★★★★

9月くらいに「漫画家兼底辺Youtuber」のピョコタンにはまり、漫画作品を何冊か購入した。一番最初に読んだのは押切蓮介との共作同人誌(ネーム:ピョコタン、作画:押切蓮介で原作ネームも収録)。これが非常に面白くて、ピョコタンの漫画に対する期待値が上がった。しかしながらこのシリーズ「ぼくは任天堂信者」の第一巻、いつも氏が動画で「ぼくはピョコタンという名前でこういう漫画を描いている者でーす」と自己紹介する時に見せているあの赤いカバーの作品『ぼくは任天堂信者1』は、率直に言ってイマイチだった。動画ではあんなに面白いのに、である。ピョコタンの漫画に少しガッカリしてしまったため、2巻を読む手が進まなかった。私が1巻をイマイチと感じた根本的な原因は、たぶん尺が短いことにある。尺が短いためストーリーがどうしても単純になり、そこから繰り出されるオチも安易になりがちになる。動画でのピョコタンは何をしても悪びれず、決してポーズ以外での自己卑下をしないのだが、1巻に収録されている漫画では安易な自虐で話を締めることが多かった。ただこれは動画のピョコタンを見ていなければそこまで気にならなかったかもしれない。また初期作ということもあるだろう。で11月に入り、また本を買ってしまったため、積読を崩すためにラクに読める漫画を読もうと「ぼくは任天堂信者2」に手を付けたというわけだ。前振り長い。しかしこの2巻は1巻より遥かに面白かった。内容的には2巻が2013年~2015年くらいのピョコタンの行動を漫画にしたもので、3巻がそれから2017年くらいまでの行動を漫画にしたものになっているのだが、1巻からの大きな改善点は尺がより長くなったことと、安易な自虐オチに走らなくなったことだろうか。もともとピョコタンの行動自体が面白いので、漫画もフツーに面白い。ただ同じネタを動画でも料理しているので、そちらと比べると漫画版にはピョコタン本人の表情や話し方が生み出す微妙なニュアンスが欠けているように思われる。若干平板に感じる部分があるかもしれない。漫画も決して悪くないのだが、ピョコタンが漫画家という肩書は維持しつつも、より少ない労力で、よりリアリティのある面白さが出せて、しかもより広いオーディエンスにリーチできるYoutubeにリソースを多く割くのはむべなるかなという感じ。

 

Kindle】『ルルとミミ』萩尾望都

★★★

これは多分『一度きりの大泉の話』が出た時の書評記事を読んだのがきっかけで購入。その後萩尾望都を検索してひっかかったEngadgetの記事を読んでいたら唐突に「ポーチで少女が小犬と」という短編についてのやりとりが出てきて、何か面白そうなので同作品が収録の本書を購入。少女漫画は少年漫画に比べて読み切りが非常に多い印象がある。それだけに埋もれている名作も多いだろうし、萩尾望都は短編でも爪痕を残す作家なので期待値は高かった。『一度きりの大泉の話』は重そうなので多分読まない。

japanese.engadget.com

で、件の「ポーチで少女が小犬と」なのだが、正直あんまりよくわからん。当時の少女漫画に対するイメージからすると型破りな作品ではあるのだろうけど、何か深い作品という風には読み取れなかった。表題作を含むその他の作品群も初期短編集ということもあり、絵柄にもモチーフも古さを感じるものが多い。何しろ50年くらい前の作品群なので。当時としては内容的にずいぶん踏み込んだり、型破りだったりするものもあると思うのだが、現代の目線で見ると、あくまで少女漫画という枠組みの中での模索にとどまっているという印象。ただこういう模索の上にその後の漫画の発展があるので、歴史的な評価はまた別にあり得ると思う。個人的に一番気に入ったのは「小夜が縫うゆかた」。母がゆかたにと残してくれた布地を、はじめて自分の手で縫うことに決めた少女が、ゆかたを縫いながら母との思い出をたどる物語。回想で描かれる母親との関係が完全に甘えん坊さんであることが、決して声高に、これ見よがしに描写されない喪失感を倍増させていて胸に来る。また風景や風俗の描写も日本的な情緒を美しく掬いとっていて魅力的。

 

【文庫】『サザエさん うちあけ話 似たもの一家』長谷川町子

★★★★

長谷川町子に若干の興味があり、Amazonレビューも高評価だったので購入。本書はタイトルからもわかる通り長谷川町子の半生記的な「うちあけ話」と四コマ漫画作品の「似たもの一家」の合本。個人的には特にこの半生記部分の「うちあけ話」が非常に面白かった。現代の絵文字みたいな長谷川町子オリジナルの絵言葉がふんだんに使われていて初見では読みづらさを感じたのだが、なんかすぐに慣れた。印象的だったのは母親の存在感。行動力が異常。孟母三遷を地で行くというか、この母にして長谷川町子あり、と言っても過言ではない気がする。長谷川家はかなり裕福だったらしく、家を買ったとか家をあげたとか、会ったばかりの人をおごりで京都旅行に連れて行ったとか温泉を掘ったとか、おそらく当時の常識から考えても規格外なエピソードが出てくる。すごい。家族関係はかなりコミカルに漫画的に昇華されて描かれているけれど実際はどうだったのか?母親と三姉妹の人間模様なんかNHKの朝ドラにうってつけじゃないかと思ったのだが、調べたらもうあった。

www2.nhk.or.jp

さすがNHK

カップリングの「似たもの一家」はそこそこ面白いのだが、漫画の面白さより当時の世相を映した風俗資料としての価値がに目が行ってしまった。個人的にはカヤを丸めて押し入れにしまうことをだらし無いこととした描写が時代を感じて良かった。登場人物の「似たもの一家」は、サザエさんを長い間見ていないのでよくわからんけど、サザエさんに出てくるお隣さんのイササカ先生の一家と同じか、元になったもののように思われる。このゆるい感じもなかなかいい。ただ、正直この2つは別に合本にする必要無かったのでは?とも思う。ページ数足りなかったのかな?

 

【ペーパーバック】『PRINCESS BRIDE』William Goldman

★★★☆

プリンセス・ブライドの映画はアメリカでやたら人気があるらしく、アメリカ人の友達の家にボードゲームを遊びに行った時に、バックグラウンドミュージックならぬバックグラウンドムービーとしてずっと再生されていたのが印象に残っている。私も80年代のハリウッド映画はそれなりに見ている方だと思うのだが、まったく記憶になかったので何の映画か聞き、その折にこの映画のアメリカでの人気を知った。その後別のアメリカ人の友人二人が小説版の貸し借りしており、借りていた方は普段小説を読まないのにやたら褒めていたのが気になったので、返すところをまた借りたという経緯。それがコロナの結構前の話なので2年越しくらいでやっと読了したという次第である。そもそも英語を読むのが早くないというのもあるが、かなり中断期間を挟んでいるのと、物語の構成上、中断を挟みやすいという点もある。物語はつまらなくないのだが、そもそもメインとなるプリンセスの救出物語が小説内小説であり、語り手は「古くて長い」原作を、より子供の興味を引くように再構成するという体で語るので、メインの物語が語られる合間に語り手による注釈や茶々があったり、語り手自信の自分語りや「現実」パートが頻繁に挟まれたりする。読書スピードが削がれる要素が満載なのである。とは言え別にそれが邪魔というわけではなく、いい箸休めになってはいる。ただ小説内物語の舞台となるフロリンという架空の国が、歴史上実在しているという設定の割に、Tongue in cheek的というか、おとぎ話的なので、枠物語となる現実世界パートの、ハリウッド映画産業の下世話なリアリティにまみれた俗な世界観と馴染まない印象を受けた。いや、たぶん馴染みが良すぎて個人的にあんまり好きになれない食い合わせだったと言うべきか。たとえばフロリンが紀元前からの長い歴史を持つシン・イスラエルで、ねちっこい緻密なリアリティで構築されていながら、枠物語の現実パートがナーロッパなみのおとぎの国という組み合わせだったらものすごく楽しめたかもしれない。私はオタクなので。まあ、一言で言うとカラリとしたリア充臭がすごい。最後のネームドロップも感心はした。因みに映画は見ていない。

 

【ソフトカバー】『ひと月9000円の快適食生活』魚柄仁之助

★★★★★

極東ブログの書評で読んだか、単に料理についての本をAmazon検索していて見つけたかのどちらかだと思うが、そんなようなきっかけで購入した記憶。ただ「極東ブログ ひと月9000円の快適食生活」で検索しても該当の書評が出てこないので別の誰かか、単にAmazon レビューの影響かもしれない。レシピ本はそんなに買う気しないけど、料理にまつわる風習やウンチクなどが語られている本は好きで評価が良いとつい買ってしまうという私の習性もある。内容的には一つの食材や日常的に料理する人の生活の知恵などについての短めのコラムが229編も収録された事典的なもの。ちゃんと巻末に索引もついている。ただコラムの文体は全くお堅いところは無く、正に「軽妙な語り口」という感じの口調で、実に手際よく軽くつくれそうな料理やサクッと真似できそうなテクニックが紹介されている。貰い物や安価に入手できたがそのままでは食べ辛い or 廃棄せざるを得ない食材を上手にリサイクルというか、別の食材と合わせておいしくいただくという趣旨のコラムが多い気がした。そのため敢えてその食材を入手してレシピを試してみようという気にはあまりなれない感じ。ただウンチクを読んでいるだけで楽しいし、料理スキルがあると生活が楽しくなるというのがわかる。1997年刊行でもうすぐ25年になるが、内容的にさほど古さを感じないのはデフレで物価がそこまで変わっていないというのもあるだろうけど、エコロジーや節約といった著者の視点が現代でも十二分に通用するのと、現代社会の問題点が1997年時点でだいたいは出揃っていたというのもあるなぁという感想を抱いた。また折を見て読み直したい本である。ただ、もし本書の21世紀版があれば読みたいなぁ、とも思う。どのようにアップデートされているのか、はたまた変わらないのか。まああんまり変わらない気はする。

 

Kindle】『White Fang』Jack London

★★★★★★

ジャック・ロンドンは「The People of the Abyss(どん底のひとびと)」を読もうと思って機会を伺っているのだけど、試しに読んでみた短編集の一発目に収録されていた「Human Drift」がクソ小難しい上に退屈極まりなかった。やばい作家なのかと心配になり著作のアマゾンレビューを読んでたら、本書の評判がかなり良かったので勢いで購入。私は動物モノ好きなので動物モノで評価が良いとすぐポチる癖がある。しかしこれが大正解。もう冒頭の追跡シーンから手に汗握る。二人の男が犬ぞりで雪原の荒野を走っている。男たちを追いかけるのはオオカミの群れ。夜ごとのキャンプで犬ぞりの犬が一匹、また一匹と姿を消す。弾薬は尽きかけているが、まだ町までは遠い。やがて…という導入部のスリルとサスペンスがとにかく最高。タイトルとなるホワイトファングが登場するのはかなり後だし、導入部と本編は物語的な関連性はかなり薄めなのだが、この小説はとにかくつかみが最高だった。これは本当にお手本にしたい。タイトルのホワイトファングが登場してからは名犬一代記みたいなお話になるのだが、それも楽しいし、実際楽しんで読んだ。ただ冒頭の追跡シーンのこれからどうなっちゃうんだろう感はさすがにもう無かったなぁ。

 

 

Kindle】『首都水没』 土屋信行 

★★★★☆

これは珍しく今月買って今月読んだ一冊。東京の洪水への脆弱性を豊富な過去事例と、なぜそうなったのかを歴史的経緯を解説しているので非常にわかりやすかった。「東京ガス田」と言われるほど簡単に地下水からガスが採掘できたため、戦前からバンバン水を吸い上げて地盤沈下に繋がったとか全く知らんかった。河川工事周りの情報も、土の堤防が一番強いとか、右岸が切れたら左岸は切れないとか、幾度となく洪水に見舞われて来た地域の知恵が盛り込まれているのも良い。個人的にグッと来たのは著者がカスリーン台風の被災者を母親として持ち、その強烈な体験から幼少期に何度も実戦さながらの避難訓練をさせられた体験を語っていたところだ。こういう個人的体験のエピソードは非常に引きが強い。本書の前半ではデータ中心の啓蒙的文章が多めだったので、前半と後半で著者に対するイメージがだいぶ変わった。

 

【Bookwalker】『ちいかわ2』ナガノ

★★★★

購入のきっかけになった書評

nlab.itmedia.co.jp

でがっつり触れられているのだけど、これは「草むしり検定」のエピソードが秀逸すぎる。最後に問題集からクイズを出すように頼まれて、ハチワレが本で顔を隠すところが泣ける。この草むしり検定ネタはまだまだ引っ張るようで今後が楽しみ。ワンカップにおでんの汁とか、梅酒にクエン酸とか、酒飲みのおっさんのライフハック的なネタが挟まれているのも試してみたくなる。まあ私はお酒は飲まないんだが。

 

【大型本】『ワンダーガーデン生命の扉』ジェニー ブルーム , クリスティヤーナ・S. ウィリアムズ 

★★★☆

数年前のカドカワ株主優待で選択。自分では一番買わないタイプの本。熱帯雨林サンゴ礁、砂漠、森林、山脈と世界各地のさまざまな自然環境とそこで生きる動物を、独特の雰囲気の絵画で紹介した絵本。ペン画の挿絵に彩色したような背景に点描のような動物画が独特の雰囲気と迫力を生んでいる。文章もまるでその場に居るかのような想像を掻き立てる仕掛けに溢れていて、少し想像力を働かせれば熱帯雨林の喧騒や、砂漠に吹きすさぶ風や日差しを感じることが出来る。子供の情操教育に大変良さそう。ドイツの黒い森での探検記や、本書には登場するチワワ砂漠には居なさそうだけど、砂漠に生きるベドウィンの暮らしなどを綿密に描いた本が読みたくなった。そういった日常とかけ離れた自然環境へのロマンを培うには最適な一冊かもしれない。

 

Kindle】『ルドルフとイッパイアッテナ

★★★

ずいぶん昔にNHKで、クロネコヤマトのイラスト画みたいな絵柄の連続紙芝居シリーズみたいなのをやっていて、その時にいくつかのエピソードを見た。今調べると「母と子のテレビ絵本」というらしい。なかなか面白くてタイトルだけは覚えていた。ひょんなことから検索に引っかかっり、懐かしくて購入したという流れ。内容については、そういえばこういう話だったなぁという以上のものはない。NHKのテレビ絵本版がYoutubeに上がっていたので少し見たらナレーションの毒蝮三太夫が本当に名調子。これに当時聞き入っていたような気がする。

 

 

 

2021年10月に買った本(7)・読んだ本(10)↓3冊減量

2021年10月に購入した本(7)

10月は7冊購入した。内リアル書籍は新書1冊。これは電子書籍版が無かったので仕方ない。残りは当然電子書籍だが、全てBookWalkerから購入。メインで使っているKindleじゃないのは、KADOKAWA株主優待でもらったポイントカード4500円分を消費したかったから。三年以上の長期保有者には特典でBookwalkerで使えるポイントが4500円分もらえる。配当もあるし、本好きにはなかなか良いと思う。ちなみにBookwalkerはここでしか読めない電子書籍があったので使い始めた。

group.kadokawa.co.jp

 

【新書】『ポンペイ・グラフィティ―落書きに刻むローマ人の素顔』本村 凌二

今月読了した『歴史を変えた火山噴火』で紹介されていたので購入。

ヴェスヴィオ火山の火山灰で埋もれていたポンペイはそのおかげで壁画や落書きの保存状態が良かったらしい。本書はその落書き群を紹介・解説したもの。当時の壁画・落書きから伺える当時の人々に思いを馳せられそう。こういうのが歴史ロマンだなぁと思う。

 

【BookWalker】『任天堂“驚き”を生む方程式』 井上理

任天堂の元社長、山内溥に興味があり購入。本人の著作を探したが見つからなかったので評価の高い本書を選択した。エピソードや名言の多い経営者なので、いろんな媒体で見聞きはしていたものの、まとまった書籍を読んだことが無かったということもある。

 

【BookWalker】『ちいかわ なんか小さくてかわいいやつ(1)』ナガノ

【BookWalker】『ちいかわ なんか小さくてかわいいやつ(2)』ナガノ

知り合いの紹介+おすすめ記事を見て購入。

nlab.itmedia.co.jp

 

【BookWalker】『サラ金の歴史 消費者金融と日本社会』小島庸平

こういうテーマを絞った通史的な本は買いたくなりがち。日本社会のダークサイドにも触れざるを得ないトピックなので、それへの興味もあり。

 

【BookWalker】『宮沢賢治の青春 “ただ一人の友”保阪嘉内をめぐって』 菅原 千恵子

どこかでおすすめ記事を読み、Amazonウィッシュリストに入れていたのをBookwalkerのポイント消費のこの機会に購入。書簡が見つかったかなにかで新事実・新発見のようなものがあったらしいという、うっすらとした記憶あり。言わずもがなだが、そもそも宮沢賢治が好きだから買ったのだが、まとまった本を読んだことはなかったと思う。

 

【BookWalker】『決定版 私の田中角栄日記』 佐藤昭子

田中角栄本はちょくちょく買っている。ただ買うだけで読んでいない。そろそろ手を付けたいとは思っている。田中角栄のような個性の強い個人を除いてはこれまで政治に興味が無かったのだが、人間のエゴのぶつかり合いがライブで一番味わえるのは政治なのではないか?という気付きを最近得たのでこれから詳しくなりたいと思っている。

 

 

2021年10月に読了した本(10)

実は10月の最終週まで、買った本>読んだ本 だった。このままでは積読山脈がプラス成長してしまうので、ラストスパート。なんとかマイナス成長に持っていけて、積読山脈を3冊とは言え少し取り崩すことが出来た。とは言え読んだ本には一貫性が無く、もう少しテーマを絞って山を崩して行きたいところ。だがそのためには蔵書の整理をしなければ。蔵書管理アプリでバーコードで読み取り登録できるものがあるらしいので、それを使って効率的な整理をするつもり。積読もテーマごとに山を分けて各個撃破した方が頭にも残りやすいはず。

 

【BookWalker】『ちいかわ なんか小さくてかわいいやつ(1)』ナガノ

★★★★

購入のきっかけになったレビューで言い尽くされているが、ハチワレの登場で物語に深みが出てきている。今後どうなるのか楽しみ。

 

Kindle】『老廃物を流す「官足法」で治る!』行本昌弘

★★★

近所の公園に足つぼロードがあり、歩いてみたら痛気持ちいい感じがしたので、足つぼマットとこの本を購入。官足法は台湾人の官有謀氏が編み出したもの。著者の行本氏はその日本への紹介に関わった人らしい。内容は足のツボを刺激すれば万病に効くということと、どの箇所を刺激すればどんな病気に効くかが書いてある。真偽は不明。足つぼマットも買った当初はフミフミしていたけど、しばらく踏めていない。これを機にまた少しずつ踏んでみるか。

 

Kindle】『空気を読まずに0.1秒で好かれる方法。』柳沼 佐千子

★★★★★

他人にいかに好印象を与えるかというテーマで、ここまでの実践性を備えた本はないのではないか?と思わせるほどすごい本。プロローグから、何もしていないのに他人からことごとく嫌われてしまうという自己開示があり、そこからいかに他人に好かれるための努力を積み重ねて来たのかが語られる。その努力の末に掴んだ気づきがタイトルにつながる『空気を読まずに0.1秒で好かれる方法』というわけだ。この空気を読まずに0.1秒で好かれる方法というのが滅茶苦茶具体的かつ実践的なため自分にもできそう、と思わせる力がすごい。ただこれを実生活で実践するのは自分自身の照れや、突然ふるまい方が変わったことにたいする周囲の違和感という高いハードルがある。本書はそこにも抜かりなく対応しており、著者自身が感じた抵抗感とそれをいかに乗り越えたのかのエピソードが的確に用意されている。巻末のケーススタディの量と具体性も素晴らしい。営業職など相手の好意をどうしても勝ち取らなければならない業種の人や差し迫った必要にかられている人は本書を買って、後は実践あるのみではないだろうか。

 

Kindle】『らんぷの下』一ノ関圭

★★★

名前と評価は聞いていたのだが、なかなか読む機会がなかった。先日Kindle版が出ているのを見つけて購入。絵の巧みさを褒められていることが多い印象があるのだが、個人的には劇画的な画風に古さを感じてオリジナリティを見いだせなかった。劇画をほとんど読んでこなかった人間なので、著者が劇画系の漫画家のどういう系譜にあるのかもわからない。内容がちょっとエロいのでケン月影とかを連想したが、正直自分の教養では正当に評価できない作家と思う。話も全般的に暗いし、探偵物の第1話(それ以降描かれなかった)みたいなのもあって微妙。内容的に一番良かったのは「裸のお百」。日本での洋画の黎明期に裸婦モデルとなった女性の話なのだが、虚実皮膜を地で行く物語の展開も骨太だし、大きな流れに翻弄され、傷つきながらもささやかな夢を見て、全てを失う女性の生きざまが、突き放した距離感で描かれていてなんかすごい。最後のカットでは女性について一言も触れずに、それでいてその女性が生きていた矜持を見せる手法が、非常に抑制が効いていて、かつ映像的なのに感動した。これはいつか映画で見たい話。

 

【ソフトカバー】歴史を変えた火山噴火』石 弘之 

★★★★

「自然災害の環境史」という副題で、火山噴火が人類文明に与えて来た影響を概説した本。豊富な実例でどの噴火がどんな影響を与えたのかを分かりやすく説明している。被害と影響の甚大さに驚く。火山噴火の影響で気候が変化し、人類が服を着るようになった説などをコロモジラミの痕跡から語ったり、ネアンデルタール人末期のの遺骨の栄養不足の痕跡からなぜ彼らが絶滅したのかの説を挙げていたり、火山と関わらない部分でもエビデンスに基づく考古学的知見がさらりと出てくるのが素敵。火山噴火にまつわる影響で特に印象的なのは世界的な飢饉もそうなのだが、1883年のクラカタウ島の大噴火にまつわるエピソードだ。噴火後の三年にわたって空気中を漂うエアロゾルの影響で、世界中で美しい夕焼けが見られたという話。ムンク「叫び」の背景もその夕焼けを描いたという説もあるらしい。不謹慎だが、そんな夕焼け見てみたい気もする。

 

Kindle】『ぼくが小学6年生の夏休みに書いた日記帳』 ピョコタン

★★★
「底辺漫画家」ピョコタンが小六の時分に書いた夏休みの日記帳。ピョコタンファン以外が読んで面白いか疑問だが、リアル小学生の夏休みの日記帳がどういったものか、という民俗学的資料的価値もある。日記のフォーマットに起床と就寝の時間の記入欄があるのも面白い。わたしが小六の頃のと比べると、ピョコタンははるかに質の高い日記を書いている。結語が「面白かったです。」になるのは変わらないのだが、それに至るまでの描写が割と細かい。また絵もしっかり描かれていて味わい深い。私の夏休みの日記は「今日は〇〇君と、□□君と、△△君と遊びました。面白かったです。」くらいしか書いていなかったし、絵なんか一回も描いた記憶がない。

 

Kindle】『笑って泣いてドラマチックに学ぶ 超現代語訳 戦国時代』房野史典
★★★☆
戦国時代のエピソードを、芸人でもある著者独特のノリで語った、いわば現代の講談本。正直最初はなじめなかったが慣れたのか後半は楽しめた。ノリに付き合えればいけると思う。ただ、どちらかと言うとYoutubeで見たい芸風だな、と思って検索するとチャンネルがあったので一本見てみた。本で読んで想像したノリより話し方が落ち着いていて教育的な印象。ただちと長い。一本10分程度に抑えてほしいところ。ある程度背景の説明はすっとばしてキモだけ話した方がテンポ良くなりそう。同じ系統のネタをやるYoutuberとしては非株式会社いつかやるがもっとオタクっぽいノリで熱く語っていてYoutuer的なノリには適っているように思う。

 

Kindle】『岩田さん 岩田聡はこんなことを話していた。』岩田聡
★★★☆
ピョコタン岩田聡追悼動画を見て購入。内容はほぼ日の岩田さん発言をまとめたもの+α。ほぼ日に載っていたものは昔読んだ記憶があるので正直お得感はない。読んだことのない人なら一か所にまとまっている利便性もあるしメリットはありそう。新録の糸井重里、宮本学の岩田氏に対する言葉が胸を打つ。

 

【文庫】サイゼリヤ おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ』正垣泰彦
★★★★★
なぜ買ったのか忘れてしまった。帯に「ネットで話題沸騰!」とあるので、話題沸騰した時にポチったと思われる。一言で言うと名著。創業から一定の成功をおさめるまでの苦労エピソード、経営哲学、日々注視している指標などメモりたくなる箇所が盛り沢山。創業者自ら語っているというポイントも高い。飲食業で長く戦い、しかも勝ちをおさめてきた人物が語る言葉は重みがある。

 

【ソフトカバー】『キッチンで読むビジネスのはなし』一田憲子 
★★
 数年前にKadokawa株主優待でゲットした一冊。主婦に向けたビジネスの啓蒙書ぽいタイトルなのでわかりやすいだろうと思い選択した。内容は著者の個人的な知己らしい経営者へのインタビュー集とそれからの学びをまとめたもの。しかし何かフワっとした印象がぬぐえず読むのに苦労した。本を書くにあたっての目的意識や問題意識といったコアになる熱意が薄く、わたしのおしゃれな人脈を披露します!以上のものになっていない気がしたので興味が持続しなかった。著者のファンなら楽しめたかもしれない。また、わたしが対象読者像から完全に外れているというのもあるだろう。合間に語られる自分語りから察するに著者の経歴は面白いしインタビューイの人選も界隈でない人間からすると珍しいので、何かコレを伝えたいという熱量があればもっと面白いものになっていた気がする。奥付を読むと、もともとWeb記事を仕立て直したものということで納得。抜きがたい身辺雑記感はここが原因か。